
早いもので、あっという間に12月。
今回は、いまのわが子と同じ小学3年生。
今年最後の朝読みということで、クリスマスやお正月が登場する絵本を中心に、冬を意識したラインナップから、子どもの意見も聞きつつ選んでみました。
12月上旬
▼1冊目
『クリスマスのきせき』
(高畠 那生/岩崎書店)
目安:約2分50秒
クリスマス関連の絵本をいろいろ探しているなか、あまりしっとり長いものよりも、わくわく楽しい感じの雰囲気のものはないかしら……?という私の気持ちにぴったりだったのが、こちらの高畠 那生(たかばたけ なお)さんの一冊。
言わずとしれた『バナナじけん』や『でっこりぼっこり』、『うしとざん』など、子どもたちを魅了してやまないおもしろワールドを描いてくれる高畠さんの手にかかれば、クリスマスはこうなると。
読み始める前に、「みんな、奇跡って知ってる?」「信じられないような、ミラクルが起きることだよ」「さてさて、どんな『奇跡』が起きるんでしょう〜」と前置きして、スタート。
もう回りくどいことなしに、絵本をひらいたその瞬間から、画面のなかでどんどん絵が動いてお話が展開してゆくので、子どもたちの目も釘付け。
「あ、わかった! どんどん小さくなってくんじゃない?」などと、予想をつぶやいてくれた子も。
はたして、どんな奇跡が起こるのか……、絵のパワーが大きいので、ぜひ実物をひらいてみてください。
クリスマスシーズンの読み聞かせの冒頭、導入にぴったりな、短く読めてくすっと場が盛り上がる一冊です。
▼2冊目
『かさじぞう』
(瀬田貞二 再話、赤羽末吉 画/福音館書店)
目安:約6分10秒
「2冊目は、みんなも知ってると思う昔話です」と言って表紙をみせ、「かさじぞう。知ってるかな?」と聞くと、半分くらいの子が手を挙げてくれた。
「その『かさじぞう』、実は大晦日、12月31日のお話だって知ってた? ということで今回は、大晦日からお正月にかけてのお話、『かさじぞう』を読んでみます」と言ってスタート。
そう、私ももちろん『かさじぞう』は知っていたけれど、今回選本のためにリサーチするなかで初めて、これが大晦日の話だということをちゃんと認識したのでした。
たくさんの『かさじぞう』の中で迷ったけれど、昔話の雰囲気にぴったりの赤羽末吉さんの絵のものを。
瀬田貞二さんの書く文章も、昔話ならではの心地よいリズム感と語り口で、読んでいるほうもとても楽しかった。
ゆきが もかもか ふってきたので
あやぁ、むごいことだなあ
すっぽりめしを さくさくたべて ねてしまったと。
などなど。いわゆる現代のプレーンな文章ではなかなか、この雰囲気は出ない。
そんな口調は子どもたちの心にも入りやすいのだろうか。わいわい聞いていた1冊目とはがらっと変わって、食い入るみたいにじーっと、お話の世界に耳を傾けてくれていた。
6分ほどのお話とはにわかには信じがたいほど、そこには物語があって。世界観にどっぷり浸かるような体験ができたのじゃないかなあ。
昔話ってすごい。やっぱり受け継がれるものには力があるらしい。
▼3冊目
『もりのおふろ』
(西村敏雄/福音館書店)
目安:約2分50秒
1、2冊目が雪つづきだったので、「ちょっと寒い絵本が続いたから、最後はみんなであったまって、リラックスして終わろうと思いまーす」と言って、『もりのおふろ』を。
この絵本はわが子が幼いころにいただいて、そのころずいぶん何度も読んできたもの。
小学3年生にはちょっと幼すぎるかなあ?と思わなくもなかったけれど、時間的にちょうどよかったのと、冷えたあとにあったまる「おふろ」という流れはありかなと思ってセレクト。前日に小3のわが子に改めて聞いてもらったときも、楽しそうだったし。
「ごしごし しゅっしゅっ」というフレーズが繰り返し出てくるところ、2年生くらいまでならまず一緒に言ってくれるけど、3年生でも言ってくれる子いるかな……?
と、実はドキドキしていたけれど、男の子たちがむしろ楽しそうに言ってくれて、とてもうれしかった。
お話が始まる前から「ごしごし しゅっしゅっ」ってつぶやいてくれていた子は、きっと家で読んでいたんだろうな。
自分が小さかったころに読んだものを、ちょっとお兄さんお姉さんになってから読むのも、きっと楽しいはず。
▼一部紹介
『ことばのこばこ』
(西村敏雄/福音館書店)
たまたま教室に早めに入れてもらったこともあり、少し時間に余裕があったので、「さて、絵本はこれで終わりなんだけど、最後にひとつだけ言葉あそびをして終わろうかな!」と紹介。
和田誠展で買っていた『ことばのこばこ』から、かさじぞうにちなんで「かさ」が登場する、こんな言葉を。
かかしにかさかしたら かかしかささかさにさした
最初は意味で区切りながらジェスチャーとともにゆっくり読んで、そのあと、もう一度読んでから、みんなに「さんはい」で一緒に言ってもらった。
口に出してみると結構長いから後半はバラけたけど、わりと言えていたし、口に出して楽しい日本語っていいよね。
ほかの言葉もいくつか紹介して、「気になった人は図書館にもあるから見てみてねー!」と結びました。
早めに教室に入れると、こんなボリュームでの活動もできて楽しい。かと思えば遅れて入室となるときもあるので、そのあたりの調整はなかなか難しいのだけれど。
今回、かさじぞうは大晦日の話と言ったときに担任の先生が「へぇ〜」と言ってくれたり、言葉遊びも一緒に言ってくれたり、参加してくれていたことがとっても嬉しかったしありがたかった。
先生も興味を持ってくれると、子どもたちもますます興味を持ってくれるので、本当にありがたいのです。
入室のとき、わが子の友達何人かから「あ、◯◯ちゃんのお母さん!」と声をかけてもらい、退室のときにはハイタッチしてもらったりして、なんだか楽しかった。
ほんの数年の、期間限定の特別なよろこびだなあ、と噛みしめつつ。