先日弾丸で行った「和田誠展」にて購入した、6冊中の1冊がこちら。『ことばのこばこ』(和田誠/瑞雲舎)。
ことば遊び好きの和田さんが、ことば遊びを集結させた1冊をつくったという説明を見て、これはぜひ買わねばと思った。
わが家の娘もちょうどひらがなを読めるようになってきたころ。これからちょうど、楽しめる内容なんじゃないかしらと思ったことも背中を押した。
個人的にはこの表紙、見れば見るほど好きになってしまう。
最初に見たときはあっさりしてるな、くらいにしか思わなかったのに、ひとりでじっ、と改めて表紙を見ていたら、「この太陽、えらい真剣な眼差しやないか」とか、「口元もきりりとしてて集中してんのかな」とか、「小箱から星が出てきてる、しかも裏表紙が月、もしかして夜の月と箱を通して会話してるのかしら」とか、妄想がたくさんふくらんできてしまって、大いに楽しくなってしまった。
この表情、見る人によっていかようにも感情や状況を当てはめられるような気がする。あなたにはどんなふうに見えるだろう。
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内容は文字どおり「ことば」遊びを集結させた絵本。
基本的には見開き1ページごとに、「数え歌」や「あいうえお作文」など、テーマがいろいろに切り替わっていく形で構成されている。
5歳の年長娘と読んでみたら、最初からパッと意味を理解するのはむずかしいものも多かったけれど、何度か説明してゆくとおもしろさに気づいたらしく、途中からは「○○が読む!」と宣言して、たどたどしいながらもはりきって読んでいた。
なかでも彼女が楽しかったらしいのは、
だれがしている かくれんぼ
みつけたぞ うまくかくれても
のように、文章の中に動物がかくれんぼしているということば遊び。
最初はぽかん、としていたけれど、理解できてからは楽しかったらしく、翌朝は父親に出題までしていた。
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もうひとつ、彼女にヒットしたのは、
さら さらさら
つる つるつる
かさ かさかさ
のように、1つの言葉を2回重ねることで別の意味になる、ということば遊び。
ここのページのレイアウト、わたしもとても好き。ひらがなで書くと、「さらさら」って確かに「さら」を2回並べただけなのに、まったく違う意味になるの、よく考えたら不思議だなあ、おもしろいなあ、と大人も改めて思う。
子どもも、同じひらがなが続けて出てくるので読みやすく、かつおもしろさをダイレクトに味わえるので、見開きにのっている15の文例を全部、元気に音読していた。
「さく!さくさく!」って、基本的に全部、自主的に「!」がつくくらい元気。すばらしいことだよ。
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大人の私が個人的に一番好きなのは、
えをかいているぼくをかいたえをかいているぼくをかいたえをかいているぼくをかいたえをかいているぼくをかいたえをかいているぼくをかいた……
とだんだん文字が小さくなってフェードアウトしていくページ。
この鏡写しみたいな構造のおもしろさ、子どものころによく遊んだなあ、好きだったなあと思い出す。そして言わずもがな、これが文章だけでなく、表しづらいだろうに絵でも見事に表現されているのが好きです。
シンプルなのに、すごく伝わる。
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寝る前に読んでいたら、序盤に張り切りすぎたのか、途中でねむたくなった娘。
うとうとしているなと思い、少しとばして一番最後の「さよならさんかく またきてしかく」からはじまる、連想あそびの歌を読んだら、そのまますうすうと眠った。
日本語のこういうリズム感って、なんだか落ち着くよね。
さよならさんかく またきてしかく
しかくはべっど べっどははずむ
はずむはぼーる ぼーるはまるい
まるいはちきゅう ちきゅうはまわる・・・
(後略)
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赤ちゃんのころ、わたしたちにはことばがなくて、ある意味世界と「そのまま」つながることができた。
それに比べたらもしかすると、ことばの世界は不自由なのかもしれない、と思う。
それでもことばには、ことばのおもしろさも確かにあって。
大人になると、「ことば」があまりに身近な道具になりすぎて、見つめ直すのを忘れてしまいがちだけれども(自分もふくめ)。
この絵本を読みながら、ああことばって不思議だな、おもしろいなという感情をいまいちど、引き出してもらった気持ち。
判型が大きいので、どんとひらいて、親子で、友だちで囲んで、わいわい読みたい。
って、書こうと思ったけれど、でも図鑑みたいにおもむろに開いて、じっくり一人で読むのも、いいね。