たんたんと絵本の記録を 絵本

絵本の読み語り記録:小学校6年生(2024.11月)

小学校にて、朝15分の読み語り記録。

6年生に入るのは10月に次いで2度目。まだ選本には迷うけれど、今回、1冊はずっと高学年で読んでみたいと思っていたものがあったのでそちらを。

さてさて、どんな反応があったでしょうか。

11月中旬

▼1冊目
『わたし』

(谷川俊太郎 文、長新太 絵/福音館書店)
目安:約3分

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もう1冊が先に決まっていたので、組み合わせる1冊として短めのものからセレクト。

谷川俊太郎さん×長新太さんという著名なコンビでおくる、福音館書店の「かがくのとも」シリーズから。

いや、「かがくのとも」なのだけれど、やっぱりそこは谷川さんの世界で。説明文とはほど遠く、やはりこれも詩のひとつだろうと思わせるような、リズミカルな文章で「わたし」がシンプルに、けれど非常に哲学的に、描かれていると思っていて、個人的にももともと好きな1冊。

「わたし おかあさんからみると むすめのみちこ」

「せんせいからみると せいと」

「となりのおばさんからみると やまぐちさんの したの おこさん」

など、ひとりの共通する「わたし」がいろいろな人からみると誰か、を淡々と、テンポよく語っていく。そのテンポに寄り添うみたいな、長さんのページ構成、レイアウト、配色がとてもピタッとはまっていて好き。

静かによく聞いていてくれたけど、「うちゅうじんからみると」と言ったときはこちらが読むより先に「地球人」とつぶやいてくれた子がいて、嬉しかった。

3、4年生くらい向けかなと思っていたけど、自分が6年生のとき、「自分ってなんだろう」みたいなことをよく考えていた記憶があることを思うと、6年生には6年生でまた、味わってもらえる1冊だったのかもしれない。


▼2冊目
『綱渡りの男』
(モーディカイ・ガースティン 作、川本三郎 訳/小峰書店)
目安:約11分

これは昨年から、6年生に入るチャンスがあれば読んでみたいなと思っていた1冊。

実話をもとにした話なので、「いまから50年前、みんなのおじいちゃん・おばあちゃんが若かったときに、実際にあった話です」と紹介してから読み始める。

いまの親世代ならば知っているであろう、ニューヨークにかつてあったツインタワーを舞台にした話。

1974年にフィリップ・プティという大道芸人が、2つのタワーの間にワイヤーを張って綱渡りをしようと考え、実際にそれを実行するまでの様子を描いていく。

実話と最初に明かしたこともあってか、子どもたちは真剣な表情で静かにじっと聞き入ってくれていた。

夜中から友人たちとワイヤーを張る準備を進めて、ついに朝、2つのビルの間をフィリップが渡るのだけれど、その様子を見開きで3ページ使って描いた絵は本当に爽快感があって、ずっと眺めていたくなる。

その前ページまでは比較的小さなコマ割りだったからこそ、よけいにこのページは、自分もその高さにいるかのような、突き抜けるような感覚を味わえるような気がする。そのページで添えられている言葉のなかに、

でも、ちっともこわくない。

ここには、ぼくひとり。なんて幸せで、自由なんだろう。

というフレーズがあって。全体的に間をとりながら、見開きページを味わってもらいながら、ゆっくりと読んだ。

事前に、騒がしいクラスだよと耳にしていたのだけど、少なくともこの日は、みんなじっと絵本を見て、真剣に話を聞いてくれているようだった。

読み終えた後、フィリップさんについて少し紹介。彼がいま75歳であること、今年(2024年)がこの綱渡りから50年で、この夏にニューヨークでそのセレモニーがあり、いまでも日々鍛錬を積んでいるフィリップさんは、綱渡りのパフォーマンスを披露したこと。

この綱渡りは映画化もされているし、今年の夏のセレモニーの動画も探せばいろいろとあるので、興味がある人は調べてみてね、と添えて。

ツインタワーについては、今回は触れなかった。どちらかというとこの絵本のストーリーが持つ爽快さや、自由さを、味わってほしいなと思ったから。


昨年6年生だったお子さんのいらっしゃるメンバーの方が、お子さんの声として、6年生になると日々いろいろと制約もあり忙しいからこそ、朝の読み語りの時間はただぼうっとして聞ける「癒やしの時間だった」と言っていたお話をシェアしてくれた。中学生になってその時間がなくなってから、よけいにそう思うのだそう。

そういう視点をもてば、高学年だからと難しいひねりを加えたものばかりじゃなくて、次回以降は、純粋にお話の世界に没頭できる話もいいな、と思った。

確かに、国語の授業で読めば感想を求められたり、考えを述べられたり、純粋にお話を味わうという経験とは少し違うだろうし、そう考えるとこの活動はやっぱり、高学年にとっても、想像以上に意味があるのかもしれない。

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