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和田誠展へ行ってきた

2022年12月20日

先日すべり込みで、和田誠展へ行ってきた。

ちょっと前にアップした『あしたから出版社』(島田潤一郎/筑摩書房)の読書記録の最後に書いていたのだけれど、和田誠さんへの興味がぐっ、と一段高まった段階で、ぎりぎり行けるような距離で和田誠展が開催されていることに気づいてしまったのだから、行かないわけにはいかず。

師走の平日にぐいと予定をねじ込んで、北九州へ日帰りしてきた。

移動の特急内では仕事の諸連絡を進めたり、 直近の課題図書を読み進めたりしつつ、とにかく急いで小倉へ向かう。夕方には福岡の西側まで戻り、保育園まで娘を迎えにゆかねばならない。夫も出張中ときているし。いそげいそげ。

ところでこの和田誠展、事前に調べて「撮影OK」と知っていたので、カメラバッグに重たいカメラを背負っていったのだ。

会場に到着して、バッグからカメラを取り出す。

さて、まずは入り口まわりの風景をおさめようかしらと電源を入れ、凍りついた。

「メモリーカードが入っていません」

なんということだろう。いつもならずっと入っているSDカード、先日修理依頼に預ける際に抜いたのを忘れていた。この前日に修理から(しかも結局修理不能という診断で!)返ってきて、そのまま持ってきてしまったのだった。自分のぽんこつぶりが安定しすぎていてもはや落ち込む気にもなれない。

ということで一瞬凍りついた後は、「もうどうしようもないわ」とすっぱりあきらめ、「ああこれは、撮影じゃなくて目の前の展示をじっくり見ることに集中しろという神のお告げなのだな……」と無理やりポジティブな理解を導入し(ないと気持ちがおさまらない)、ただの鉄の塊となったカメラはPCの入ったリュックもろともコインロッカーに預けて、身軽に展示会を楽しんだのだった。

(スマホのカシャ音、自分もあまり好きではないし気になる方も多いと思うので最低限にしつつ、どうしても撮りたいなあというものだけ撮影しながら、じっくり堪能しました)

すでにいろいろな各地を巡回している展示会だし、その内容全体についてことこまかにご紹介することはしない。

ただ、自分の印象に残った大きく2点を、自分の備忘録も兼ねて書いておこうと思う。

まずひとつめは、「和田さん、多彩すぎるやろ」である。

そもそも、私の中での和田誠さんは「絵本作家」としてのイメージが強く、先日の読書記録で「装丁家」としての一面を知り、和田誠さんという人のことをもっと知りたい、と思って検索した背景がある。そして検索結果の中にあらわれたこの「和田誠展」がまさに「和田誠の膨大で多岐にわたる仕事の全貌に迫る初めての展覧会」ということで、これは行かねば!と思って足を運んだ。

だから、ある程度の心構えはあったつもりなのだ。

ただ会場を歩いて思ったことは、「予想をはるかに超えている……」

そもそも「和田誠といえば似顔絵が有名」なことすら知らなかったし、以前から知っていて自分が好きだった初回放送の「みんなのうた」『誰も知らない』、のアニメーションが和田誠だったことも知らなかったし、それどころか映画が好きなだけじゃなくて映画監督として脚本とかも書きながら、エッセイストとしても著作があって……と、幅が広すぎる。

著書は200冊だそう。

職業名であえていうなら、イラストレーター、グラフィックデザイナー、装丁家、映画監督、エッセイスト、作曲家、アニメーション作家、アートディレクター、絵本作家……。

しかも広すぎるだけじゃなくて、それぞれの仕事をすさまじいクオリティでプロとしてまっとうしているのだから、恐れ入るのみである。絵本作家としての一面しか知らなかったとは、なんと限られた一面だったのだろう。

物書きの端くれとしては、こういう執筆過程の思考がわかる原稿、食い入るように見てしまう

 

もうひとつ、私の印象に残ったのは、『親馬鹿小馬鹿』という絵本の存在である。

これは、和田誠さんと、その息子である和田唱さんの共著という形で出版されているもの(和田誠さんは奥様が料理研究家として有名な平野レミさんであり、息子の唱さんは人気アーティストTRICERATOPSでヴォーカル&ギターをつとめる和田唱さん)。

その唱さんが4〜5歳ごろに描いた絵に、父親である和田誠が解説を加えるという形式で進む、独特の雰囲気がある本。

ガラスケースの中の展示だったので、自由にページをめくったりはできなかったが、ひらかれた1ページと表紙だけでも無性に「好き!」と思った。

わたしも手前味噌ながらわが子の描く絵が好きで、それをiphoneの待受にしたり、Tシャツにしたいと思ったりしていたのだけど、この『親馬鹿子馬鹿』を見て、おお!かの和田さんも子どもの絵にこんなに興味を持っておられたのか……!と勝手な親近感を抱いてしまった。

もともとは1981年に「家庭画報」誌上に連載されていたものらしく、それがまとめられて1983年に講談社から出版されたそう。さらに2017年に復刊ドットコムから復刊されて、そちらには巻末に親子対談も収録されているという(読みたい)!

売店にあったら絶対に買って帰ろう、と心に決めていたのだけれど、残念ながら置いていなかった。インターネットで検索しても、いまはもう刷られていないらしく、定価よりずいぶん高い価格で取引されているよう。

いまこれを書きながら、あ、そうだと思いつき、まずは図書館で予約を入れてみた。まだ誰かの貸出中になっているので手元にくるのは少し先になりそうだけれど、とても楽しみ。またこのブログでも紹介したい。

あとは、駆け出しデザイナーのころ、絵本も作りたいけど依頼は来ないからと自ら作家や詩人に文章を依頼して「私家版絵本」をつくっていたというのも衝撃のエピソードだったな。

文章の依頼、絵、デザイン、購入者の発送まで自分でやっていたとか。星新一さんや、また谷川俊太郎さんなどに文章を依頼して、7冊の私家版絵本を出版している。行動力が半端じゃない。

行動力に背中を叩かれたような気持ちになるとともに、和田誠さんすらも、そういうことをしていた時期があるのだという事実に励まされもした。私も私なりに、やってゆきたいもんだ。

帰りに、娘と自分へのお土産に6冊も絵本や本を買った。

また積ん読本が増えてしまったけど、嬉しい。

またマイペースに、1冊ずつこのブログでも紹介してゆこうと思います。

ちなみに、すでに2021年から各地で開催されている和田誠展ですが、公式HPによると今後も
2023年 3月24日(金)〜5月7日(日) 岡山県立美術館
2023年 5月20日(土)~6月18日(日)(予定)美術館「えき」KYOTO
2023 秋 愛知
などが予定されているそうです(2022年12月21日時点)。

お近くの方はぜひ。

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