絵本

子どもが何度も持ってくる。そりゃそうだ。【偏愛絵本紹介】『えらぶえほん』(絵:ニック・シャラット、文:ピッパ・グッドハート、訳:聞かせ屋。けいたろう/講談社)

2021年1月12日

正直なところ、外国の翻訳絵本より日本の絵本が好きなほうだ。

それはたぶん、ひとつには、わたしの中では読み聞かせや言葉のひびき、語感とセットで「絵本の楽しみ」になっているからだと思う。

ただその一方で、自分の好みに走っているとものっっっすごく偏っている自覚があるので、子に読む絵本を選ぶときには「自分はそこまで好きじゃないけど子どもは好きかもしれないから」という視点も忘れずにいよう、と常々思っている。

この『えらぶえほん』も、実はそうした不純な(?)動機でわたしの手によって選ばれた1冊。だが、これがなかなかどうしてというべきか、やっぱり、というべきか、買ってから1年以上を経てますます最近、子のお気に入りの1冊となっている。

やはり視野は広く持つべしや。

そもそもわたしがこの本を手にとったのは、まだ当時2歳の子を連れて通院した帰り、(自分と子への)ごほうびという名目も兼ね、百貨店の本屋に立ち寄ったからだ。

そこでわりと発行されたばかりのこの『えらぶえほん』が棚にあって、どうやら海外では子どもたちを釘付けにしているらしいという帯のうたい文句かなにかに惹かれて、たまにはこういうの買ってみよう、と買ってみたのだ。

構成は、とてもシンプル。

その名のとおり、「えらぶ」ことがメインの絵本だ。

たとえば、

どの いえに すんで みたい?
きのこの いえ? おしろ? どれが いいかな?

という文に、見開きの大きな1ページがあって、そこへ所狭しといろいろな家のイラストが並んでいる。

それ以外にも「おでかけするならどれにのる?」「だれとともだちになりたい?」などなど、いろいろな質問があって、それぞれ見開きいっぱい、その選択肢がイラストで描かれている、という具合だ。

結論からいうと、この『えらぶえほん』、「絵本を通して子どもと繰り返し遊びたい」「遊ぶツールとしての絵本を探している」方にはかなりおすすめの1冊だと思う。

わが子も、買った当初はいまいちピンと来なかったみたいだが、ときどき思い出したように持ってきたりする日々があり、4歳近くなった今では大いに遊んでいる。

ストーリー性のある絵本、わたしは大好きだけれど、でも1回読んだらもうお話がわかってしまってそれで終わり、という一面がある。つまり、子どもの強敵「飽きる」がわりと早くやってきてしまう。

それと比較すると、この『えらぶえほん』に終わりはない。毎回、毎回、読むごとに「選びたい」ものが変わる。この前はこれにしたけど、今度はどうしようかな。毎回、絵をよーく見て、選びたくなる。

親になんでもかんでも選ばれてしまうことの多い小さな子たちにとって、「自分で選ぶ」というのは大好きなことのひとつ。それこそこの『えらぶえほん』の魅力なのだ。

そしてわたしがこの絵本を一緒に読むときも、毎回変化をつけるようにしている。たとえば「きみがいってみたいのはどこ?」なら、ある日の会話はこんな具合だ。

○○ちゃんは、どこ行ってみたい?

えっとねー、えっとねー、○○ちゃんは、ここ!

いーねえ。その島に行きたいんだね

ママは、どこ行きたい?

んー。そうだなあ。前はここだったから、今日は違うところに行きたいなぁ。じゃあ、今日はここにしよう。この湖。ヨットぷかぷか浮いてるし。これに乗りたい

じゃあ○○ちゃんもそこ行きたい!

いいよー。あ、じゃあこの湖から、このヨットにのってさ、この川をどんぶらこどんぶらこって流れていって、海にいこうか。そしたら、さっき○○ちゃんが選んだ島に、ふたりで一緒に行けるね

うん!うん!

「きみがいってみたいのはどこ?」の質問と、そこに描かれた見開きの絵によって、少なくともこのくらいの量の会話が繰り広げられる。しかもそれが、毎回毎回、違う内容で。

うんうん、『えらぶえほん』を選びたくなる子供心、ちょっとわかる気がする。

一方で、正直なところ、わたしみたいな偏愛で、日本の絵本の色彩や文化に慣れていると、この本の一部の絵、たとえば食べ物やファッションの絵のテイストは、好みが分かれる方もおられるかもしれないな、と思う。

でもなんというか、そういう異文化に触れるのも大切だよなあ。という観点で、わたしはこの絵本を楽しんでいるし、買ってよかったな、と思ったりもするのだ。

短文だから、ときどきは日本語とあわせて勝手な英訳で、子に読んだりもしている。

この記事の冒頭で、さもわかったような顔をして日本語の語感がうんぬんと言っていたけれど、郷に入っては郷に従え。英語のリズムや音に身を委ねてみたらよいのかもしれない。するとなんだか絵のテイストもスッと入ってくるような気がするから、不思議だ。

2〜5歳くらいのお子さんと、「会話のきっかけになる、一緒に遊べるような絵本」を探している方には、おすすめできる1冊。

やっぱりなんでも「自分で」「自分で」が嬉しいお年ごろ、「自分で選ぶ!」の魔力は、強いです。

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