絵本

リズミカルなかけあいが2・3歳への読み聞かせにぴったり。『あーそーぼ』&『どこいくの』(やぎゅうまちこ/こどものとも年少版 2012年4月号&2019年4月号 福音館書店)

2021年2月11日

わたしがやぎゅうまちこさんの絵本に出会ったのも、やっぱり「こどものとも」シリーズがきっかけだった。

最近、絵本紹介を書くようになって気づいたけれど、思った以上にわたしは「こどものとも」シリーズから絵本とつながるきっかけをもらってきたみたい。

「こどものとも」の月刊誌シリーズは、1956年から数々のロングセラー作品を生み出しながら続いているそうだけど、長く続くしくみには、愛されるだけの理由があるんだろうなぁ。やっぱり福音館書店さんの力はすごい。

そんなわけで、娘が2歳になってまもない4月、持ち帰ってきた初の「年少版」(いま考えると娘の保育園は2歳クラスで年少版を読んでたんだな)が、『どこいくの』だった。

表紙からして、絵のテイストや色合いがわたしの好きな感じ。クレヨンで書いたような輪郭のかすれ具合とか、どことなくレトロで落ち着いたみんなの洋服とか、好きだなぁ。

(表紙だとちょっとわかりづらいんだけど、個人的にはねこさんのファッションコーディネート、とても好き。ボトムスのシルエットも好きなので、ぜひ実物を見てほしい!)

娘がこの絵本を持ち帰ってきた当時、じゃあ読もうかと言ってページをめくって、1ページめからすぐ「あ、これは読んでて楽しいリズムのやつだ」と気づいた。

ねこさん ねこさん どこいくの
きいろい りぼんで どこいくの

ちょっと そのへん ぶーらぶら

そんなふうにリズミカルなかけあいが、どんどん続いてゆく。

『しりとりあいうえお』みたいな五・七・五調も大好きだけれど、こちらはもっとなんだろう、わらべうたのような感じ。

親しみがあって、子どもが自然とまねしたくなっちゃうような。

いろいろな動物に出会いながら、繰り返し繰り返し同じフレーズが出てくるので、子どもたちも読み終えるころには「ちょっと そのへん ぶーらぶら」とか「ごいっしょしても いいかしら」とか、自然と覚えちゃっている。

繰り返し系の絵本って、何度か大人が読んだあとは、子が自分でめくりつつお話を進められるのがいいよね。文字が読めなくても、絵と記憶の力で。

ところでこの『どこいくの』、前半はみんなの散歩に首をつっこみながら、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと冒険して、わいわい大人数になってゆくのだけど。

後半にはこんなシーンがある。

うさぎさん うさぎさん
どこいくの
おおきい ますくで
どこいくの

のどが いたいから
おいしゃさん

そしてその次の見開きページは、こう。

おいしゃさんは ちょっとね
おいしゃさんは ちょっとね

うさぎさん おだいじにー

それまでの話ではみんな「ごいっしょしても いいかしら」と言ってそれぞれの散歩についていっていたのに、ここでは「おいしゃさんはちょっとね」といって見送る

なんかその感じがまた、正直でいいなあと思ってしまった。そうそう、なんでもかんでもいいってわけじゃないよねぇ。

そのあとみんなはプリンをもらうんだけど、よく見ると裏表紙では、プリンをもらえなかったうさぎの家に、プリンをもっていってあげていたりして。こういうちょっとしたお話が裏表紙にひそんでいるの、ほっこりする。

それでね。

その後わたしが図書館でいろいろと年少版を借りまくっていたとき、『どこいくの』の7年前、2012年4月に発刊されていた『あーそーぼ』を見つけたのです。

『どこいくの』しか知らなかったわたしは、姉妹作みたいなものがあるとは思いもよらなかったので、背景色が違うよく似た表紙を発見して「わっこんなのもあるんだ!」と嬉しい驚きを感じたのでした。

そしてこちらもやっぱり、『どこいくの』と同じく、読み聞かせにぴったりの、声に出して読みたくなるリズム感の絵本。

ぶーたこちゃん あーそーぼ

あーとーで いーまは ごはんの
まっさいちゅう

おかずは なあに?

さかな と とまと

こんな感じでまた、いろいろな動物の家をまわっていく。

そのなかで4回、5回と「あーそーぼ」「あーとーで」、それから「いーまは○○のまっさいちゅう」ってフレーズが歌みたいに繰り返される。だからやっぱりこちらも、子どもたちもすっかり覚えちゃうみたい。

実際、娘も3歳のころには読み聞かせした翌朝に自分で絵本をめくりながら、(まだ文字が読めないのに)なんとなく最後まで声を出して読めていた。

斬新なものや奇想天外なものも個人的には大好きな反面、そういうわかりやすさとか、安心感ってのもやっぱりいいよね。と思ったりもする。

やっぱり、昔から愛されるわらべうたみたいだなあ。なんだか落ち着くというか、自分がこどものときのことを思い出すようななつかしさもある。

奇をてらったというよりは、「やっぱり子どもたちこういうの好きだよね」ってところと、「大人もこういうの読み聞かせしやすいし楽しいよね」ってところを、いーい感じで詰め込んでくれている絵本。そんな感じです。

それでいて、「まじめな優等生絵本!」ってわけでもなく。それぞれの動物の受け答えに個性があらわれていてちょっとクスっとさせてくれる遊び心がまた、いいのよね。それが「いーい感じで」に含まれているニュアンス。

ちなみに『あーそーぼ』の方はその後、単行本化もされているみたい。

あーそーぼ (幼児絵本シリーズ) [ やぎゅうまちこ ]

ということは人気作だったわけで。やっぱり子どもも好きなんだなぁ。なんというか、居心地がいいもんね。

願わくば4、5、6歳で読んでいく少し年上向けの「こどものとも」シリーズの中でももう一度くらい、この女の子やうさぎやカエルたちに、会ってみたい。

 

※この記事内の表紙画像は、福音館書店さんHP内の「著作物の利用」記述にもとづき、利用可能な範囲で使用しています。

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