絵本

0・1・2歳が「もっかい!」と大好きになる『でんしゃくるかな?』(きくちちき/こどものとも0.1.2. 2018年8月号 福音館書店)【絵本紹介】

2021年2月10日

娘が1歳のときに持ち帰ってきた月間予約絵本の中で、たぶん、いちばん娘の反応がよかった1冊。それがこの『でんしゃくるかな?』(※2021年2月に単行本化されています)。

表紙を見るだけで、「好きだったなー、この絵本!」と当時の思い出がよみがえる。

きくちちきさんの描く、なんというか、“くたぁ”とした脱力感をともなう、ゆるやかな輪郭の動物たち。

このなんともいえない脱力感、一度見たら忘れられない。

お話の流れとしてはとってもシンプル。

くるかな? くるかな?

と、見開きの1ページで動物たちが並んで電車を待っているシーンがあり、

きたー!

と、次の見開き1ページで電車が到着するのをバンザイしながら迎え、

ばいばーい

と、動物たちみんなで見送る。

その繰り返し。

でもこの繰り返しが、最高にこどもの心をつかむ。

そして「きたー!」のバンザイも、「ばいばーい」も、ちょうど1歳くらいの子が自分でまねしやすいジェスチャーや言葉。これも大きなポイントだと思う。

そしてもちろん繰り返しといっても、そのなかで絵や言葉にはちょっとずつ変化があって。

だからこそ子どもも、「くるかな?」の次はどんなページが来るんだろう!とわくわくしながら、次のページをめくりたくなるのです。

あとはなんといっても、きくちちきさんの絵が醸す雰囲気がとってもよい。

“くたぁ”とした、一見、「筆を使って気を抜いて描いたらだれにでも描けるんじゃないか?」と思わせるような親しみがあって、でも実際にやったら絶対にこんな絶妙なバランスの絵なんて到底かけっこない、唯一無二の動物たちが、なんともいきいきと、この絵本の中には息づいているのだ。

「きたー!」のシーンは3回あるのだけれど、あらためてじっくり見てみたら、1回目、2回目、3回目と徐々に動物たちのボルテージがあがっていく様がすごい。

合間にある「くるかな?」のシーンも、1回目、2回目、3回目を比べるとあきらかに動物たちの気持ちが高まってきているのが伝わる。そういう細かな変化がきっと子どもたちにも伝わって、わくわくが高まるんだろうな。

3回目の「きたー!」の絵はね、もうページから喜びがあふれでてるよね。

喜びをからだで表現してくださいといったら、こうなるんだなって。

絵本の見開きいっぱいに、ジャンプして飛び出しそうなくらいLivelyに息づく動物たち。ああ、いいなあ!

ところで、わたしが初めてきくちちきさんの絵に触れたのも、実はこの『でんしゃくるかな?』だった。

正直にいうと、最初に「きくちちきさんの絵に触れた」のは本当にそうだったのだけど、当時のわたしは、この絵本の作家さんについて気にもとめていなかったのだ。

それが図書館でいろんな絵本を借りるようになって、絵本作家さんにも興味を持ち始め、その中できくちちきさんの絵本もいろいろと読むようになり。

あるときあらためて家の本棚に並ぶ『でんしゃくるかな?』の作者を見て「えっ、これもきくちちきさんだったのか!」と驚いたのでした。どおりで!好きだった!と後から思ったという(笑)。

独特の線とかダイナミックな筆跡とか、個性があって素敵だなと思う作家さんです。

ちなみに「こどものとも」は、毎月発行される月刊誌の中から、人気のあるものが後に単行本化されて発売される流れがある。

この記事を書くにあたって調べていたら、この『でんしゃくるかな?』も、2018年8月に月刊誌として発行されたものが、2021年の2月5日に単行本として初版が発行されているじゃないか。

これを書いているのはまさにその数日後なので、あまりにタイミングがよくてびっくりした。

小さいころあの絵本好きだったなー、と思い出して絵本紹介を書こうというタイミングで、単行本化しているなんて、勝手にご縁を感じちゃうわ。

そして単行本化したということは、やっぱり人気の1冊だったんだなー、と思った次第でした。さもありなん。

0、1、2歳のお子さんがいる方には、とてもとてもおすすめです。

そして「きたー!」「ばいばーい」とまねっこしてくれる子どもの身振りは、言うまでもなく、とてもとてもかわいいのであります。ふふふ。

 

でんしゃ くるかな? (0.1.2.えほん) [ きくちちき ]

※この記事内の表紙画像は、福音館書店さんHP内の「著作物の利用」記述にもとづき、利用可能な範囲で使用しています。

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