※本シリーズ(vol.1〜6)は2019年に書いた過去noteより転載するものです。当時とは感じ方など変わっているところもありますが、当時の記憶として、そのまま載せてゆきたいと思います。
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さあ、こちらは今回もたんたんと。
今回は12冊ほど借りた中から、気に入った5冊をご紹介。うち、夏っぽいものや、お盆に関係ありそうなものも2冊ほど。
酷暑でなかなか外遊びできなかったりもするけれど、室内にいてもせめて季節を感じさせてあげたいなあ、とか思っちゃう親心(笑)。夏にかぎらず、季節感のある絵本って、そのときに読むととても気持ちにマッチして好き。
ささ、それではさっそくゆきましょう。
※『たんたんと、絵本の記録を』シリーズをはじめた気持ちの背景はvol.1にて。
最近のお気に入り絵本(娘2歳7ヵ月)/2019年8月
※ちなみに「お気に入り」とは、娘が気に入ったもの、わたしが気に入ったもの、2人とも気に入ったもの、どれでも可というゆるい運用です。
『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!』(くぼまちこ/アリス館)
最近いろんなところで見かけて気になっていた一冊。
「はい、はみがきするよ〜」「イヤッ!!」っていうお決まりのやりとりに毎日頭を悩ませている親御さんがいたら、かなり本気でオススメしたい。
我が家もだいたい上の「イヤ!!」というやりとりからはじまるので、この絵本はとても役に立った。
コンセプトは表紙とタイトルの通りいたってシンプルで、はみがきをれっしゃに見立てて口の中を探検しつつ掃除してゆくという物語。
作者はデザイナー出身、かつ出版社で幼児向け教材の商品開発などもされていたくぼまちこさんで、絵本はこの『はみがきれっしゃ』がデビュー作だそう。なるほどそういうバックグラウンドもあって、このコンセプトの絵本なのだなあと納得。
繰り返し繰り返し出てくる「しゅっしゅっしゅっ」という音が、汽車の音と、ブラシで掃除する音を兼ねていて、うまいなあ!と思う。
「にんじん しゅっ!」「わかめも しゅっ!」と、食材を掃除してゆくシーンがあるのだけれど、その本を読んだ後は実際に歯ブラシを持ってきて、その日食べたものを思い出して、絵本のフレーズを応用しながら磨いてた。
「今日何食べたっけ〜?あ、にんじん食べたね。にんじん、しゅっ!とまとも、しゅっ!あと何食べた?あ、おさかなも、しゅっ!」という感じで。
娘のほうも絵本でイメージが湧いているからかまんざらでもなさそうで、「しゅ!」とか、「なに、たべたっけ〜?」と、ニコニコしながら一緒に言ってくれたり。まあ、ご機嫌なときはだけど(笑)。
歯みがきって「虫歯になると痛くなるよ〜」というアプローチが多いような気がするけど(わたしもたまに言っちゃうけど)、そうじゃなくて、ポジティブに楽しくなるアプローチでいいなあと思った。とても実践的な絵本!
『できるかな? あたまからつまさきまで』(エリック・カールさく、くどうなおこ やく/偕成社)
名作が多いエリック・カールさんの絵本の中でも、“我が家史上大ヒット”レベルで娘が気に入った1冊。
もちろん鮮やかな色彩とダイナミックな構図は言わずもがなで、母も見ていて楽しい。
たとえば「ぼくはペンギン あたまをくるんとまわせるよ きみはできる?」のように、1ページごとにいろいろな動物が出てきて「こんなこと、きみはできる?」とメッセージを送ってくる。
「できる?」と言われた娘はニコニコしながら得意げに、首をぐるぐる回したり、手をぱんぱんならしたり、足をどしどし踏み鳴らしたり。
なかでも一番かわいいのはね、ワニの真似で、「おしりをくいくいゆする」のアクション。2才児がちょっと中腰になって、まるいおしりをくいくいとふっている姿を想像してほしい。ふりふり。ああこりゃ、なんとも愛らしくてたまらないわ。
リズムがあって読みやすく、子どもと遊んでコミュニケーションをとりながら読むのにぴったりだと思った1冊。2歳くらいが一番楽しいかもしれない。1歳後半くらいのプレゼントにオススメかも。
『あくび』(中川ひろたか さく、飯野和好 え/文溪堂)
あまりに衝撃的な表紙で思わず借りちゃった1冊。
娘がいま気に入っている「かば」が最初に出てくるのも決め手になった。
はじめにかばがあくびをして、それを見たきりんにあくびがうつって……とどんどんあくびがうつり、最終的には「ぼく」にあくびがうつって……というお話。
あくびの音として「フワー」という表記がつづくのだけれど、不思議なことにというか当然のことにというか、何度も「フワー」とあくびの真似をしていると、ほんとうに読んでいるほうもあくびが誘発される。ねんねの前に読むのに最適。
表紙の絵のとおり、だいたんにデフォルメされたようなダイナミックな絵が特徴的。色合いもはっきりしているし、全体的にインパクトと勢いが感じられてわたしは好き。娘も気に入っていたみたい。
読み返してたらまた、なぜかあくびが出てきた(笑)。
ほんと、入眠に最適な魔法の一冊。
『みずくみに』(飯野和好/小峰書店)
表紙とタイトルを見て「あ、夏っぽいな!今借りるのにちょうどいい」と季節感にひかれて借りた1冊。
期せずして上の『あくび』で絵を担当していた飯野和好さんが、こちらでは絵と文の両方の作者だった。あとがきを読むと飯野さんは埼玉・秩父のご出身だそうで、その里山の暮らしと沢の水のことを絵本にしたようだ。
今回借りた中で、母の個人的な趣味ではこの1冊がいちばん好きだった。
文章は少ない。絵を中心に、おじいさんと女の子の短いセリフと、自然がもたらすいろいろな音を軸に、山の様子が描かれる。
「さぁー さぁー」「ごくごく」「ぱさ ぱさ ぱさ」「ちーい ちーい ちゅるるるるるる」などなど、わずかな擬音語と、あとはもう、ただすばらしい絵の力で、山の澄んだ空気や匂いがびしびし伝わってくる。
ある夏の日の、なんということのないひとコマを切り取った絵本なのだけれど、読むだけでとても癒やされる。というのが母の感想。
娘のほうも、文字が少ない分次々と絵が切り替わるし、鳥、ひと、犬、水、などイメージはつかみやすいのか、最後まで飽きずにじっとよく見ていた。沢にちょうちょが飛んでいると「ちょうちょ!」と発見したりね。
夏に読むとすうっとして気持ちのいい読後感を味わえる1冊。
『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』(長谷川義史/ビーエル出版)
だれでも子どものころ、「お母さんのお母さんがおばあちゃんで、じゃあおばあちゃんのおばあちゃんってどんなひとだったんだろう?」みたいなことを、一度くらいは考えたことがあるのではないだろうか。
この本はそんな子どもたちの疑問に真正面から向き合ってくれる楽しい1冊。
最初は「ぼく」からスタートして、「おとうさん」、そして「おじいちゃんのおとうさん」、と次第にさかのぼり……、「ひいひいひいおじいちゃんのひいひいひいおじいちゃん」くらいからだんだん、加速しはじめて、最後には「ひい」が数えられないくらいまでさかのぼると……誰にたどりつくかはお楽しみ。
各“おじいちゃん”が登場するたびに、背景や服装が昭和だったり明治大正っぽかったり、はては縄文時代にいたるまで、時代を絵に反映してこまかく描かれているところがとてもいいなあと思った。
大人になってあまり疑問に思うことはなくなってしまったけれど、そうだよなあ、自分もこうやって、各時代を生きたひとたちの末に存在するのだよなあと、絵本を読みながらしみじみ思う。
お盆の時期に、「お盆って何?」とか「ご先祖さまって何?」とか、そういう話題をあつかうときにも役立つ1冊かもしれないなあ、と思った。
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さてさて、今回はこのへんで。
ところで今回はいつもと違う図書館を訪れたのだけれど、そうすると絵本の選書はもちろん展示の方法がかなり違ったりして、目に入ってくる絵本も変わるのでおもしろいなあと思う。
しかし本全体はもちろん、「日本の絵本」というものに限ってもその数は膨大にあって、全然読み切れる気がしないなあ。
探す楽しさは、まだまだ当分続きそうだ。
※以上、過去note(2019年8月15日)より転載