※本シリーズ(vol.1〜6)は2019年に書いた過去noteより転載するものです。当時とは感じ方など変わっているところもありますが、当時の記憶として、そのまま載せてゆきたいと思います。
---
書きたいことは山ほどあるのに、なぜこれを一番優先してやろうとしているのか自分でもわからない。
でもちょっと、だれのためでもなく、自分と娘のためだけに、不定期で、気に入った絵本の記録を残してゆきたいなという気持ちになった。
最近、隔週でちょっと遠くの図書館へ通っていて、そこでどっさりと絵本を借り、2週間後の返却日までめいっぱい、じっくり娘と楽しんでいる。
そうして毎晩のように絵本を読みながら、ふと、思ったのだ。こんなに浴びるように毎日絵本を読んでいるのに、図書館の本って、そのとき感動してもどんどん流れるように忘れていくなあ、なんだか、もったいないなあって。
もちろん手元に買ったり、プレゼントでいただいたりした本は、そりゃあもうなめたりかじったり破られたりするくらい愛されて、どの本も愛着があるし、記憶に残っているんだけれど、全部が全部買えるわけでもないし。
図書館は大好きだし、大いに頼りたい。そこでの一期一会も楽しみたい。
そうして1週間や2週間、我が家の一員として、毎晩、娘との時間を過ごしてくれる絵本たちが、ただ「通り過ぎてく」のが、ちょっと寂しいなあと思ったのだ。だから、ほんの一部だけでも記録がしたい。2週間に1回とか、月に1回とか、気まぐれな頻度にはなると思うけれど。
ふつうのエッセイに比べて読まれにくい形式だとわかっているから、この「絵本記録」は、たとえスキがひとつもつかなくてもたんたんと続けていこう、くらいの気持ちでいる。でもそのうえで、だれかの参考になったりしたら、それはそれでもちろんうれしいなあ、なんて思いつつ。
それから、長すぎると自分がつかれちゃうので、1回5冊以内くらいにしぼって(お気に入りを厳選して)書こうと思う。一部ネタバレも込みなのでご注意を。それじゃあ以下、たんたんとゆこう。
▼最近のお気に入り絵本(娘2歳4ヵ月)/2019年5月
『でんしゃでいこう でんしゃでかえろう』(間瀬なおかた/ひさかたチャイルド)
女の子だけど、ここ最近はとくに乗り物に興味津々の娘。図書館で見て「あ、これ好きかも」と思って母が選んだ一冊だけど、案の定、大ヒット。何冊も借りてきた中から、「でんしゃ」といってこの絵本をだいじそうに抱えて枕元にもってきて、何度も熱心にめくっていたね。
電車が移動してゆく過程を、背景の景色と、中の人々の変化とともに描いていて、変化の観察が楽しい。途中でお団子食べ始めるご年配夫婦がいたり、トンネルで泣き出す赤ちゃんがいたり。乗客それぞれのドラマを、こちらの観察次第で読みとることができて、たのしい。
右から読むと「でんしゃでいこう」、左から読むと「でんしゃでかえろう」で、両方から読めるというアイデア構成。こういう遊びごころ、母とても好きよ。ガタンコトンじゃなく「テテトト テテトト」なんて擬音も、独特でよかった。
『えを かく かく かく』(エリック・カール/偕成社)
言わずと知れた「はらぺこあおむし」の作者、エリック・カール氏の一冊。どちらかというとわたしは、むしろこちらの作品のほうが好きかもしれない……というくらい、美しいな、手元に置きたいな、と思った本。
大判の絵本で、絵もとても大きくて迫力がある。広げると紙芝居くらい。その中にあのエリック氏の色鮮やかな世界で描かれた動物が、見開き1ページでばん!ばん!と次々に現れる。例えば「あおいうま」や「きいろいうし」「むらさきいろのきつね」などなど……。娘は「もーぅ」とか「コンコン」とか、鳴き声をまねして楽しんでいた。
何より本当に色が美しくて、かつ大きいので、筆跡や、表面の絵の具を削り取ったような跡もリアルに見てとれて、大人も見入ってしまう。最後に一枚添えられた絵は、エリック・カールが影響を受けたという、フランツ・マルクの絵。そして「この絵本のはじまり」にあるエピソードは、保護者側が楽しい。エリック・カール氏の原点をのぞかせてもらえるような美しい絵本。
『とことこちゃんのおかいもの』(なかそね まりこ/佼成出版社)
けばけばしくない、レトロな色づかいが好き。
かわいい絵だなあと思って図書館で選んだのだけれど、家に帰って一度読んだら娘がいたく気に入って、寝る前も、朝起きてからもなんども読んで読んでとせがまれることになった一冊。自分で持ってくる率が一番高かった。
とことこちゃん、おかいものに行くのだけれど、行くお店、行くお店で閉店ですと言われて……。テンポがよく、文体にリズムというかパターンがあるので、子どもにもわかりやすくて楽しいのかもしれない。全体的に森が舞台なので、動物たちがたくさん出てくるのもよかったかな。
最後にバースデーのシーンがあるのだが、そこで勝手に母アレンジで、毎回ハッピーバースデーの歌をうたうようにしていたら、娘はにこにこ手拍子してくれて、読むたびにそこで歌を期待するようになっていた。「ハッピバースデーtoとことこちゃーん」って歌うと、そのとき娘が絵本に向かって「どうぞ」みたいに手を差し出すの、かわいかったなあ〜。
『あさになったのでまどをあけますよ』(荒井良二/偕成社)
もうこれは完全にわたしの趣味なんだけど、荒井良二さんの絵本が好きだ。
娘が生まれるか生まれないかくらいのころ、本屋で絵本を探していて『そりゃあもういい日だったよ』という荒井良二さんの絵本に出会って初めて荒井さんの絵に触れ、勝手にファンになった(もちろんその本も我が家の本棚に並んでいる)。だから図書館でも、荒井さんの本に出会うとついつい借りてしまう。
この一冊は、あさをテーマにしていることもあって、全体的に色づかいが明るくてやわらかくて、爽やかな気持ちになった。
荒井さんの色づかいが好きだ。1枚めくるごとに、見入ってしまう。美術館で、展示されている絵を一枚一枚じっくりと眺めているような気持ちになる。そのくらいの贅沢さがある。
壊れそうに繊細……というよりは、どちらかというと大胆で、荒々しくて力強さもあって、でもやわらかくて、優しくて。突き抜けるような大胆さがあるのに、どこまでもやさしくてやわらかい。不思議な魅力がある。娘に読みながら、母が美術作品としてもひっそりと楽しんでいた一冊。
*
とりあえず、今回の記録は以上。
読み返して思ったけど、わたしは個人的に、色づかいで絵本を選ぶ傾向があるのだなあ(笑)。
でも、ゆっくり美術館をめぐるような機会もなかなか少なくなったいま、手軽にプロの絵に触れることができる絵本という媒体は、たしかにわたしの中でとても貴重で、それを娘と読む時間はわたしにとってもだいじな時間なのかもしれない。
娘に絵本を読みながら、そして娘に絵本を選びながら、母も自分の趣味欲を満たしているようなところがあるんだろうな。産後は小説もとんと読めなくなったしね。
そんなことを思ったよ。
(おわり)
---
※以上、過去note(2019年6月10日)より転載
※『あさになったのでまどをあけますよ』については後日、ここで偏愛レビューも書いています。
-
授乳疲れでへろへろのときに美術館へ行った感覚を味わって救われた【偏愛絵本紹介】『あさになったのでまどをあけますよ』(荒井良二/偕成社)
この本を初めて手にとったのは、娘がまだ0歳のころだった。 わたしははじめての育児にへろへろしていて、そりゃあもうへろへろしていて、へろへろ以外なにものでもなかった。 (ちなみに、荒井良二さんといえば『 ...
続きを見る