先日の『和田誠展へ行ってきた』の中で「読みたい!」と言っていた、『親馬鹿子馬鹿』。ついに手元に届いて読むことができたので読書記録を。
この1冊は、イラストレーターや絵本作家として知られる和田誠さんと、その息子である和田唱さんの共著という形で出版されているもの(和田誠さんは奥様が料理研究家として有名な平野レミさんであり、息子の唱さんは人気アーティストTRICERATOPSでヴォーカル&ギターをつとめる和田唱さん)。
その唱さんが4〜5歳ごろに描いた絵に、父親である和田誠が解説を加えるという形式で進んでゆきます。
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とにかく、唱くんの絵を中心にページが展開されていくので、色がカラフルだし、手触り感のある絵が心にひびいて、めくってゆくのが楽しい。
最後の方で和田さんが「知人のうちを訪ねると、その家の奥さんが我が家のアルバムというやつを出して来て」、何冊も見ているとだんだんうんざりしてしまうけれど、この連載で自分も読者にそういう印象を与えたのではないか、と書いておられるところがある。
ただ、私個人に限っていうと、うんざりとはほど遠く、最初から最後までにこにこ、にやにやしながらページをめくっていったのでありました。
というのも、この『親馬鹿子馬鹿』というタイトルにもおそらく和田さんが込めたように、和田さんが、お子さんを見つめる温かくて優しいまなざしが、ひとつひとつのページから伝わってくるのでありますよ。
なんだろう、それは同じく子育て中の身から言わせてもらうと、巨匠・和田誠さんをぐっと身近に感じられるようなページの連なり、ということでもあり。
ああ、和田誠さんもひとりの親御さんであり、お子さんの書く絵や言動に、こんなふうに感心したり、まいった!と思ったりしながら、日々を過ごしていたのだなあと、親近感を持ってしまったりもしたわけです。
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それでいて、和田誠さんの解説やエピソードを読みながら唱くんの絵を眺めていると、私を含めて世の親馬鹿たちはきっと、改めてハッとさせられるのだと思われます。
「あっ、子どもの描く絵、やっぱりおもしろいですよね! 宝の宝庫ですよね!和田さんもそうやって言うんだから、やっぱり子どもの描く絵にはなにかありますよね!」と。
子どもがもっと小さいころは自分も、いちいち我が子の描くものに対して「この線がいい!」とか「この色づかい天才!」とか感動していたはずなのに。だんだん年月を経るごとに、慣れ、みたいなものが生じて、以前ほど真剣に子の絵と向き合うことがなくなっていたかもしれないなあ。なんて。
そんなことも考えて、改めて我が子の絵を真剣に見よう、と思ったりもしました。
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絵本を好きになってから、絵の上手い下手とか、一体なんなんだろうなあ、とよく思います。
私が大好きな絵本作家の方々はその多くが、「子どもの描く絵にはかなわない」「子どもの絵が一番です」というようなことを言っている。
実際こうやってまじまじと子どもの絵を見ていると、大人の絵にはない力強さやたくましさ、素直さみたいなパワーがあるなあと思う。
ああ、自分にはこういう絵はもうかけないよなあ、と寂しい気持ちになったりもして。
子ども心を忘れない大人になりたい、と子どものころから思って生きてきたけれど、きっともういろいろと、置いてきてしまっていることがたくさんあるね。さみしいけれど。
それでもせめて、そんな大人に近い存在であることを、あきらめたくないなあ、それにはまず、君の絵にもういちど、真剣に向き合うことからだ、なんてことを、この本を読みながら思ったりしたのでした。