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『日常 Vol.2』(日本まちやど協会)読書記録

2022年12月9日

『小さな泊まれる出版社』を購入したブックスキューブリックけやき通り店に、数カ月後に再び訪れたとき、偶然気になって、手にとって購入していた1冊。そのときは、その2冊に真鶴出版さんという共通項があるとはまったく知らず、後から知っておどろいたのだった。

真鶴出版さんの生み出す本の装丁やタイトル含めた佇まいがまんまと私好み過ぎることを思い知らされたので、偶然だと思ったけれど必然なのだろうなあ、などと思う。

ちなみに書店で手にとった最初のきっかけは、『日常』というタイトル。自分もこれまでいろんな場所で日常、をキーワードにしてきたこともあって、『日常』というタイトルのなかにいったいどんな内容があるのかとても見てみたい、と思ったからだ。

ぱらぱらとめくったら、その名のとおり日常の風景を切りとったような写真がたくさんあって、いいなあと思う。『日常』というタイトルだけではわからなかったけれど、めくっていたら地域にフォーカスしたものだということがわかった。自分が、地域でやりたいことを妄想しはじめているタイミングで出会ったのもご縁だなあと思い、買って帰ろうかなと思い始める。

隣には『日常 Vol.1』があって、他にもいろんな本を買おうとしていたので今回はどちらか1冊にしよう、と逡巡。Vol.2のほうを買った決め手は、ある地域のお店の誕生ストーリーの中に「居場所にしてはならない、ということ」という見出しがあったから。

ぼんやりとではあるが、自分や子どもたちを含めたサードプレイスのような、居場所づくりはむしろ自分のなかではやってみたい方向性のひとつだったので、逆に「どういうことだろう、その考え方も知ってみたいな」と興味をひかれたのだった。

読みながら考えていたことのいちばんは、「日本にはいろんな地域があって、それぞれの地域で皆こんなにも軽やかにおもしろいことをして生きているのだなあ」ということかもしれない。

わたしもちょうど2022年の2月くらいから近隣地域の(といっても電車で4駅くらいあるのだけれど)棚貸し本屋さんに関わりはじめて、月イチでお店番をしたり、個性豊かすぎる棚オーナーさんたちと関わるようになっていて。

そのなかで、びっくりするほど皆、軽やかに自分のお店を始めたり、仕事も2つ3つ掛け持つというか自分で作り上げているような人たちが普通で、濃いな、おもしろいな、さすがこの地域だからおもしろい人が多いのかもしれないなあ、なんて思ったりもしていたのだけれど。

この『日常 Vol.2』を読んで、いやいやそうか、こういう、わたしがようやくこの1年くらいかけて見えるようになってきた「日常」は、日本各地のいろんな地域でもあるんだ、ふつうのこととしてあるんだなということをすごく感じて、さらに視野が開けたような気持ちになった。

掲載されていたまちやどオーナーのみなさんもまさに、複業している方々ばかり(ところであのアンケート、ああそうか、母集団がまちやどオーナーさんだと日本の平均的なイメージとこんなにもずれるんだな、地方や地域では普通のことなんだなあというのが伝わってきて、ととてもおもしろかった)。

『日常』編集長であり真鶴出版の川口さんの「おわりに」の中に、異なる取材地域の共通点として「自分たちの暮らしを豊かにしていくという姿勢」があげられていて、ああそうだなあと思ったのだけれど。そういう気持ち、心意気みたいなものが各地で確実にぽこぽこと沸き立つようにあるのだなと。

さらにその「おわりに」の中に、

“それこそが特集で紹介したまちやどオーナーたちが実践していることであり、〈1988 CAFE SHOZO〉で菊地省三さんが30年以上前から行っていることなのかもしれません。さらに井上岳一さんは、そんなローカルで起こり始めている活動を、地域同士がつながることで「面にしていくべきだ」と提案します。
この雑誌『日常』を制作、そして販売していく過程で、そんな「点を面にしていくこと」に少しでも貢献できたなら、これほどうれしいことはありません。”

(『日常 Vol.2』一般社団法人日本まちやど協会 p139より)

とあって、まさに今回も、私が点でしか捉えられていなかったことが、『日常』を読むことによって少しうっすらと膜のような面を意識することにつなげさせてもらったなあ、と思ったのでした。

ちなみに、最初に気になった居場所のくだりは、くわしくは本書をぜひ読んでいただけたらと思うのだけれど。

個人的に、特に印象に残った部分を引用させていただきたい。

“結果的に居場所になることはあっても、ちゃんと表現する人たちが集まらなきゃいけなかった。このベッドタウンで『なんかつまんないな』って思ってる人たちが、『変な店だな』って違和感を持つような場所にならないと、生活のまち並みに埋もれてしまうと思ったんです”

(『日常 Vol.2』一般社団法人日本まちやど協会 p29より)

もちろんこれはきっと、まちのあり方や、新しくつくる場所の目指すところによって変わってくるのだろうとは思うけれど、そうかなるほどな、と思った。上記に続いて、「生活のまちには消費の連鎖が根強くあり、商店を営む人をのぞけば『つくる人』は少ない」とあったことも。

居場所をつくりたいということを言う人は周りには多いし、私もそんなふうに周囲の人に話したりもしていた。それが悪いことだともまったく思わないけれど、確かにそれは、結果的にそうなる、を目指したほうがいいのかもしれない。それも含めて、そこをどんな場にしたいのか、何を目指したいのか。そのあたりを中心に考えることを忘れたくないなと思った。

最後に、個人的に一番「ああ、好き」と思ったのは、裏表紙に印刷用紙が公開されていたこと。

ZINE的なものをつくったりもする自分にとって、用紙は気になるけれど知識が多いわけでは決してなく、そのときになってあたふたするので、ああこの紙こういう感じなんだな、というのを、(小さな用紙見本ではなく)実際に制作物の形で、文字や絵が載った状態で見られるというのはとてもとてもうれしい。ありがとうございます。

表紙の装画を、販売店の方に直接手描きしてもらっているというしかけも驚いたし、とてもおもしろくて素敵な取り組みだなあと思った。消費から、つくるへ。そんな世界に自分ももう少し、軸足をうつしてゆきたい。

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