絵本

やさしくほこっと。大人もずっと眺めていたくなるような。【偏愛絵本紹介】『チリとチリリ』シリーズ(どいかや/アリス館)

2021年1月29日

長さんや荒井さんのようにダイナミックで大胆な絵も大大大好きなのだけど、たまに、なんか今日はやさしくてほこっとした絵本が読みたいなぁ、という日もある。

そういう日にわたしの中でぱっ、と思いつくのがこの、『チリとチリリ』シリーズだ。

どいかやさんが描く『チリとチリリ』の世界に出会ったのは、とある絵本展に行ったのがきっかけだった。その中でチリとチリリの原画や、絵本をもとにしたパネルなどを目にして、あまりのかわいらしさに衝撃を受けたのだ。

パステルだろうか、色鉛筆だろうか、わたしに専門知識はないけれど、そんなふうにやさしいタッチで描かれる独特の絵。ぱきっとした輪郭のない、ふうわりと溶け込むような絵。

なんだろう、ちょっとおかしなふうにも聞こえるかもしれないけど、「絵本のなかの世界みたい」な世界が、まさにチリとチリリの世界だな、と思ったりする。

やさしくて、あたたかくて、ほこっとしていて。

そしてお話も、はっきりと起承転結があるストーリーというよりは、チリとチリリと一緒に小さな冒険をしながらその日を過ごす、それを小さなわくわくとともにたんたんと追いかける、というような。

絵のタッチも、ストーリーも、「派手さ」みたいなものとは対極にある。でもそれがとてもいいし、落ち着く。元気じゃないときにも、ページをひらきたくなる。ひらくことでちょっと元気になったり、癒やされたりする。そんな絵本は貴重だなと思う。

そしてよくよく観察すると、どのページにもこまかいところまで、ほんとうによく描きこまれているのよね。たとえばシリーズ1冊目『チリとチリリ』の表紙をめくって見える見開きには、森の中に、お話の中に出てくるくまとうさぎがちっちゃーく描かれていたりとか。

そういうちっちゃな隠れキャラだったり、サブのストーリーだったりがいろんなページにちょこちょこと忍ばされていて、それを観察して探すのも楽しい。

1ページ、1ページ、隅の隅までじーっと、時間をかけて眺めていたくなる。

それが『チリとチリリ』シリーズの絵だなあ。

読んであげるならそうだな、4〜6歳くらいの女の子が、一番好きかもしれない。そしてたぶんそのお母さんも、好きになってしまう人が多いと思う。というかむしろ、おとなの女性が一番、とりこになってしまうかも。

ながめていると穏やかな気持ちになれる、そんな1冊です。

ちなみに現在、わが家の手元にあるのは、『チリとチリリ』と『チリとチリリ まちのおはなし』の2冊。「うみのおはなし」や「ちかのおはなし」、「はらっぱのおはなし」などなどは、図書館で借りて読んだ。でもやっぱり、定期的に眺めたくなるんだよなぁ。

とくに「うみのおはなし」の色づかいは、夏になると無性にまた見たくなる。

青ってこんなに深いんだなぁ、って思うよ。

子どもに読むからという大義名分で、やっぱり買ってしまおうかしら……。

ちなみに絵本ナビさんでは、『チリとチリリのシリーズ』が7冊(2021.1月現在)、それぞれためし読みができるようになっているので、興味がある方はぜひこちらから。

『チリとチリリシリーズ』ためし読み
(絵本ナビさんのサイトにジャンプします)

ぜひためし読み用の画面で、大きく表示してみてください。ほこっとしますー。

チリとチリリ [ どいかや ]
チリとチリリまちのおはなし [ どいかや ]
チリとチリリうみのおはなし [ どいかや ]

-絵本

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