思い立って、この場所に愛称をつけることにした。
そもそも、呼びやすい名前がほしいなあ、とはずっと思っていた。だって『At your own pace』って長い。
じゃあなぜそんな長ったらしい名前をつけたのかといえば、最初はとにかく、「自分が大事にしたいけど時々忘れてしまいそうになること」をタイトルにしておけば、目にする頻度が上がるから忘れないだろう、という単純な理由だった。
そのねらいは、ある程度は機能している気もする。それに、あえて呼びづらい名前、埋もれやすい名前にすることで、穏やかにいられるような気も、ちょっとした。
もちろん、テーマ自体を変える気はこれからもない。“At your own pace”というフレーズ自体は今も好きだし、タイトルとして見える位置に残しておきたい。ただそれだけだといかんせん長いし、覚えづらい。しかもそのまま検索なんてしちゃったらもう大変。意味を教える和訳サイトみたいなものがずららと出てくる。
ついでに言うと、初めて会った人に「あっとゆあおうんぺーすっていうページを作ってて……」などと言おうとすると、名称が長すぎて、しかもそれ自体が熟語だから文章の区切りもわかりづらくて、つまるところ伝わりづらい。
以上、総括すると、わかりづらい。
わかりづらいなら、つけてしまおう固有名詞。
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うーん何がいいかな、と逡巡した結果、ひとまずは、「あのてんぽ」という愛称でやってみることにした。
「あのてんぽ」は、「吾(あ)のてんぽ」。
「吾(あ)」とは、昔のことばで「わたし」のこと。
Wikipediaによると、
吾(あ):奈良時代以前から平安時代まで一人称として使われた。現在では短歌や俳句と言った音数制限のある詩歌で使用される他、南近畿地方などに方言として残る(和歌山弁の「吾がら」など)。それ以外の地域でも地名などに残っているのが見られる(吾妻・我孫子等)。
だそう。
わたしはもともと、短歌で俵万智さんはじめ複数の方が使っているのをお見かけしたことがあって、印象に残っていた。そこで今回「マイペースの意を、どうにか言い換えられないかな」と考えていたとき、ぱっと思いついたのだった。
またお察しのとおり、「あの・その・この」と使われる「あの」でもあるから、「吾のテンポ(私のテンポ)」というだけじゃなくて、それぞれの人のなかで自分なりの「あのテンポ」「THE tempo」みたいなものを思い浮かべていただけたらいいな、という気持ちもあった。
ちなみになぜ「あのペース」じゃなくて「あのてんぽ」かというと、それはただ語感がよかったからである。
たとえば今後文フリとかで作品を販売したりするときに「あのてんぽの店舗」なんて看板をたてられるしね、とか、ダジャレた思いがあったことはご内密に。
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そしてこれは堂々と後付けだけれども、そういえば音楽で「ア・テンポ」という言葉があって、その意味するところが「もとの速度で」であることも背中を押した。
時にペースがかき乱されたりすることがあっても、「もとの速度で」。そう考えると「自分のペースで」という意味につながるところがありそうだ。うんうん、いいぞとすっかり気をよくして、これいいやんとなった。
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ということで『あのてんぽ〜At your own pace』、今後もぜひ、気まぐれにふらりとお立ち寄りください。
こちらも吾のテンポで、お待ちしております。