2023年3月5日に福岡市南区のやず本やさんで開催された「絵本よしながこうたくさんがやってくる!読み聞かせ&ライブペイント」に参加してきた。
よしながこうたくさんといえば、『給食番長』。
ところで『給食番長』には、標準語の本文とは別に、全ページに博多弁の本文が書いてあるのをご存知だろうか。
子どもから博多弁を輸入してようやっと生息しているエセ福岡人のわたしとしては、ディープな博多弁について「この読み方でいい、のかなあ……?」と発音やイントネーションに迷うこともあり、ご本人の読み聞かせがあるならぜひ聞きたい!と思った次第。
しかも子ども参加型のライブペイントって、絶対に楽しいじゃないか。絵本作家さんと一緒に、見るだけじゃなく子が参加できちゃうライブペイントって、めちゃめちゃ貴重だと思う。
以前から、福岡に身をおく絵本作家さんとしてずうっと存在が気になっていたけれど(サイン入りの『妖怪図鑑』も持っていたり)、わたしは直接ご本人をお見かけしたことがなく。たまたま発信を目にして、わくわく申し込んだのだった。
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えー。
ひとことでいうと、ものすごい熱量のイベントだった。
とりあえず個人的に一番印象に残ったことは、よしながこうたくさんのホスピタリティ魂! これに尽きる。
開始時刻前の待ち時間も、こどもたちの間に普通に座って同じ目線で雑談してくれていたり。
貴重な絵本原画をまとめたファイルを配って、自由に閲覧させてくれていたり。
いよいよ、開始!
となればこうたくさん、愉快な出で立ちで三線弾きながらあらためて入場(これから参加する方のことを考えてあえて写真はのせないぞ)。
子どもたち、一瞬で好きになっちゃうよな。
最初はスライドを用いつつ、想像力の膨らませ方や、絵本の発想のみなもとについて、具体例を用いながらレクチャー。
その具体例がまた、子どもたちが大好きなぶっ飛び方をしているものだから、会場は大盛りあがり。
時折、頭のかぶりものをぽんぽんと変えてゆくのも粋な計らい。
読み聞かせに入るまでに、すでに30分くらい経過していて、むしろ贅沢なワークショップやな!と思ってしまった。
そしていよいよ、こうたくさん直々の読み語り。
身振り手振りを交えて読み語るその様は、なんだか演劇を見ているかのよう。
博多弁バージョンで読んでくださったのがうれしかった。「〜ごたぁです」とか、こぶしをきかせて読んでもらうと、なんだか伝統芸能を見ているみたいで楽しい。
「絵本の読み聞かせ」って一般的には、「しーっ!しずかにじっとして聞きましょう」みたいな雰囲気がある気がするけれど、こうたくさんが一番体動いているし、にぎやかだから、逆に子どもたちは言われなくても引き込まれるし、自然としずかに聞き入っていた。
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休憩をはさんで、ライプペイントへ。
こうたくさんは軽妙なファシリテーションで子どもたちの言葉をどんどん引き出して、それを一緒に形にしてゆく。
手を挙げた子たちが交替で何かを描き足したり、こうたくさんが筆を握って、例えば腕や足がどんな方向に描かれるものなのかなどを子どもたちが指示して、一緒に描いていったり。
参加型の言葉どおり、みんなで絵を描いてゆく感覚がある。
なにがどーなってこーなって、というのはそれこそ、その場を共有した子たちの特権でもあると思うので事細かには書かないけれど。
とにかく、子どもたちがみんな「はいはいはいはいはいはい!」って大合唱で、あちこちから手を挙げて、場の熱量が高いのが印象的だった。
わが子はどっちかというとおとなしめで、前半は全然手を挙げられずにいたのだけれど、次々にみんなが指され、前に出て絵を描き足してゆくのを見て、その後は少しずつ手を挙げて参加できるようになっていった。最初は控えめに、最後はピシッ!と肘まで伸びていた。
ところでライブペインティングのわりと序盤、それまで数人がリレー形式で描いてきた「顔」を、ある少年がまっくろに塗りつぶすという局面もあった(後にこうたくさんのFacebookページで見たら、「10数年ぶりの猛者」とのこと)。
おもしろいなあと思ったのは、そのときに子どもたちは誰ひとり、怒ったり、ブーイングしたりしなかったこと。
おとなの凝り固まった感覚だと「みんなでつくってきたものを、そりゃないよ〜」と文句のひとつでも出そうなところだが、子どもたちはむしろそこからどうするか?にすぐ気持ちが向いて手を挙げていて、すごいなあと思った。
子どもたちのほうがよほど、ライブ感を自然に受け入れているというか、何が起こるかわからない自由さを楽しんでいるらしい。
子どもたちも、そしてもちろんこうたくさんも、自然とその場の状況を受け入れて、そこからまたみんなで新しい「顔」を仕上げて、こうたくさんと子どもたちのコラボレーションによって体や背景も描かれ、ある生き物が誕生していった。
わたしが何よりすごいなあと感じたことは、こうたくさんが、子どもたちがどんな答えをぶつけてきても、それを決してなきものにはせず、ちゃんとすべてを取り入れて進んでゆくという姿勢である。
子どもたちも子どもたちで、それまでの雰囲気から「このひとはおもしろいひと!いろいろ言っていいひと!」と敏感に判断しているから、遠慮なく、もうそりゃあ自由奔放に「おしり!」とか「うんこ!」とか目をきらきらさせながらふざけまくる(むしろ最初から、こうたくさんの持ってるポインターがそういうモチーフで盛り上げていってくれていたのが大きいと思うけど)。
絵の途中はもちろん、最後の命名のときにもそういうワードが飛び出していたけど、こうたくさんは「えー、それは今さすがにちょっと」って否定したりしない。えーいやってまえ〜という感じで、さらさらっと取り入れちゃう。
学校みたいなルールの場はルールの場であっていいと思うけど、こういう自由な場も自由な場で、絶対あってほしいと思っちゃう。誰に邪魔されることもなく自由に想像をもりもりふくらませて。子どもたち、楽しかっただろうなあ〜!
(これを書いてから、よしながこうたくさんのFacebookページで過去のライブペイントをさかのぼってみたら、やっぱり基本、子どもたちにNG出さないことを大事にしておられるよう。ただやむをえずそういかないこともあって反省した…というエピソードがまたおもしろいので、ぜひ見てみてください。しかし今回でライプペイント323回目とは……すごい。どおりで納得のこなれ感、と思いました)
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結局、大盛りあがりで時間は超過。
でもそこで、中途半端に短縮しようとして途中から雑になるなんてことも一切なく、最初から最後まで同じ熱量でやりきっておられた。敬礼。
その後のサイン会も、順番に、ひと組ひと組、その場で絵入りのサインを描いてくれた。サイン中も、子どもに向かって積極的に話しかけてくれる。
わたしは自分が子どものとき、大人が、「目の前に自分(子ども)がいるのに大人に向かって話を進めること」にイラッとしたタイプの子どもだったので、こういう方に接すると勝手に嬉しくなってしまう。いまは自分が大人側になっちゃったけどさ。
一人ひとりに丁寧に接しているぶん、サイン待ちの時間は結構あったけれど、「このへんのかぶりもの、かぶっていいからね!」ってこうたくさんが置いてくれていたかぶりものを子がかぶって写真を撮ったり、こうたくさんワールド感あふれる人形たちと記念撮影させてもらったり、貴重な原画ファイルをぱらぱらとめくらせてもらったりして、子も飽きずに待ててありがたかった。
世の中には「お手を触れぬよう……」な展示が多いなか、いろいろ触り放題だし、撮影もOKだし、気前のよさ、出し惜しみのなさがすごい。
ということで最初から最後まで、よしながこうたくさんのホスピタリティ魂!をひしひしと感じるイベントでした。
私がもらった缶バッジと子がもらった缶バッジ、眉毛の表情が微妙に異なることに後から気づいた。こういうの、楽しいよねえ。
イベントの途中途中、「おじさんをいたわりなさいよぅ〜!」とか冗談めかしながらちょくちょくおっしゃっているのもまた楽しく聞いちゃっていたけれど、後にこうたくさんのtwitterを見て、本当にお疲れさまでした……っ、と思ったのでした。
全力の時間、ありがとうございました。
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▼ちなみに会場になった「やず本や」さんもおもしろいところで、やずやさんが運営する新しいコンセプトの本屋さん。1階が書店・カフェで、2、3階が書斎(会員制ラウンジ・個室)になってるみたいです(https://www.yazuhonya.com/)。