ひさびさ、4年生の担当。
クリスマスや冬など季節の絵本を読もうかな〜とも思ったけれど、あまりしっくりくるものに出会えず。季節を問わない絵本で、「4年生に聞いてほしいな」といまの自分が素直に思うものを選んだ。
さてさて、どんな反応があったでしょうか。
12月上旬
▼1冊目
『わたし』
(谷川俊太郎 文、長新太 絵/福音館書店)
目安:約3分
前回6年生でも読んだけれど、4年生にもきっといろいろ感じてもらえるだろうと思って選んだ1冊。
「谷川俊太郎さんて知ってる?」と冒頭に聞いたら、「あ、知ってる!」との声。
教科書でもたくさん登場するから、子どもたちもよく知っている。
そんな詩人の谷川さんは、この間亡くなったけれど、たくさん素敵な詩をのこしてくれたよね。今日はみんなで谷川さんの世界にひたってみよう、と言いたかったのだけれど、ちょっとスムーズに言えず、うまく導入できなかったのが反省点。
本自体の紹介は、前回の自分の投稿から引用する。
谷川俊太郎さん×長新太さんという著名なコンビでおくる、福音館書店の「かがくのとも」シリーズから。
いや、「かがくのとも」なのだけれど、やっぱりそこは谷川さんの世界で。説明文とはほど遠く、やはりこれも詩のひとつだろうと思わせるような、リズミカルな文章で「わたし」がシンプルに、けれど非常に哲学的に、描かれていると思っていて、個人的にももともと好きな1冊。
「わたし おかあさんからみると むすめのみちこ」
「せんせいからみると せいと」
「となりのおばさんからみると やまぐちさんの したの おこさん」
など、ひとりの共通する「わたし」がいろいろな人からみると誰か、を淡々と、テンポよく語っていく。そのテンポに寄り添うみたいな、長さんのページ構成、レイアウト、配色がとてもピタッとはまっていて好き。
静かによく聞いていてくれたけど、「うちゅうじんからみると」と言ったときはこちらが読むより先に「地球人」とつぶやいてくれた子がいて、嬉しかった。
3、4年生くらい向けかなと思っていたけど、自分が6年生のとき、「自分ってなんだろう」みたいなことをよく考えていた記憶があることを思うと、6年生には6年生でまた、味わってもらえる1冊だったのかもしれない。
4年生では、いぬのごろうが出始めたあたりから「え?」となっていて、声を出して反応しながら聞いてくれた。
そしてやっぱり「うちゅうじん」くらいになると、「ちきゅうじん」と返してくれる。
私は私で変わらないのに、見る人にとっていろんな私がいる。
「わたし」ってなんだろう、を見つめ直すひとときになったなら嬉しい。
▼2冊目
『落語絵本 ねこのさら』
(文・絵 川端誠/ロクリン社)
目安:約8分30秒
以前5年生向けに同じ落語絵本シリーズで「てんしき」を読んだとき、ちょっと落ちが伝わりづらかった感触があったので、今回4年生向けに読むならもう少し落ちがわかりやすいものを……と考えていて、見つけた1冊。
お茶屋のおじいさんを騙して儲けようとする骨董屋の主人と、その上を行くお茶屋のおじいさんの話なのだけれど、落ちが明快で見事。
ちなみに読み始める前、「落語って知ってますか?」と聞いたら「知ってるー」と言ってくれた子は多かったけれど、「実際聞きに行ったことある人?」と聞いたら、1,2人。まあそのくらいだよね、と思いつつ。最初に触れる落語を読む者としては気合が入るというもの。
みんな集中して、しっかり話を聞いてくれていた。
ところで猫の値段を「三両」と言ったときに、「安っ」とつぶやいた子がいたので、今の値段ではだいたいどのくらいだよ、と言えるようにしていけばよかったなと思った(ちなみにいま調べてみたら、江戸時代と現代では、暮らしや制度などのさまざまな条件が違うため、一概には計算できないとのこと。それでも一応試算するなら、2024年現在の物価を目安とすると、米の値段なら10万弱、そばなら26万、賃金なら45万程度となった。参考にしたのは、貨幣博物館のこちらのページ)。
今回は4年生に初めて落語絵本を読んだこともあり、ちゃんとおもしろさが伝わるかな、どうかな……とどきどきしていたのだけど、読み終えたとき、目の前の女の子が「おもしろかった!」と言ってくれたので、よかった!
かつ、別の子も「ずるっ!(ずるい)」とつぶやいていたので、ちゃんとストーリー伝わっている子も多そうだな、と実感。
落語って独特の世界ではあるけれど、個人的に親しみやすい日本の伝統芸能だし人生の機微にとんでいると勝手に思っているので、子どもたちにも積極的に読んでいきたい。
▼3冊目
『にょっ!』
(ザ・キャビンカンパニー/小学館)
目安:約3分10秒
時間に余裕があれば読もう、と思って持っていっていた、3冊目。
先生が予定より少し早めに入室させてくれたので、こちらもしっかり読むことができた。とてもありがたいし、持っていっていてよかった!
落語絵本はしっかり集中してお話を理解しながら聞く感じなので、「最後は気楽に、声を出していいから、リラックスしながら聞いてね〜」と言ってからスタート。
すると、表紙を見せたらタイトルからすでに、みんなが「にょっ!」「にょっ!」と教室のあちこちから言い出した。声に出して読みたくなるフレーズだよね。このミステリアスな雰囲気の表紙とあいまって、わくわく感がある。
表紙の絵にもあるとおり、シルエットで海から何かが「にょっ!」と出てきて、「これ、なんだと思う?」と聞く、その繰り返しなのだけれど……。
これが、想像とはちょっと違う方向に進むからおもしろい。
こうした構成の本は幼児向けの本も多いけれど、この1冊はぜひ、小学生になって「正解」を想像するようになっちゃってから、読んでみてほしい1冊。もっともっと自由に、発想していいんだよ。
教室を出たあと、先生が、「みんなは何を想像した?」と子どもたちに問いかけてくれていて、子どもたちもそれに元気に答えているのが聞こえた。
絵本の読みがたりの余韻からクラスに入ってくれていたことがとても嬉しかった。
「はい、じゃあ算数のノート出してくださいー」とか、ぱきっと切り替えることもできただろうに、あえてちゃんと、先生も一緒になって聞いてくれて、その世界にコメントをして子どもたちの目線に寄り添ってくれるの、本当にいい先生だなと思う。
そういう先生がいるから、子どもたちも元気に反応してくれるのかな、と感じた。そして子どもたちが素直に反応してくれるから、先生もより、寄りそっていこうとしてくれる、そんな循環があるのかもしれない。
ありがとうございました。今日もみんなの1日がよきものでありますように。