ZINE 書籍

文学フリマ福岡9で買った本・ZINEの感想【vol.1】『タイムフリーで待ちあわせ』『ななしな vol.1』『ぐらぐらぐらし』

2024年2月7日

なんと。いつのまに2024年も2月中旬ではないですか。

おかしい。確かこのポストを書こうと思い立ったのは12月で、「今年のことは、今年のうちに」なんて決意しながら書き進めていたはずなのですが、ジングルベールと流れ始めた年の瀬あたりからあまり記憶がありません。

まあ過ぎてしまったものはしかたないので、決意を「思い立ったが吉日」に都合よく改めまして、なんどくじけてもめげずに思い立ってゆこうかと。

ということで、すっかり機を逃してはしまいましたが、私も2023年10月22日に初出店した「文学フリマ福岡」(その日の記録はこちら)にて、ご縁あってめぐりあったみなさんのZINEや書籍たちの感想をぽちらぽちらと置いてゆきます。

せっかくなので(?)、個人的に、それぞれの本のお供にしたいと思った飲みものか食べものを勝手に書き添えておきます。ぜひご一緒に。

※書影について:文学フリマではSNS上で作品の書影や感想をシェアすることが奨励されている背景と、自分自身も作り手として書影掲載を歓迎することから、書影を掲載させていただいております。問題がある場合は大変お手数ですが、DMやお問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

『タイムフリーで待ちあわせ』(muda、硬水)

mudaさん、硬水さんというお二人による、テレビやラジオのコンテンツを中心にした往復書簡。

私自身はテレビやラジオからはかなり縁遠くて、芸能人の名前や世間の流行りにもだいぶ疎い人間です。

だからこの本の説明を最初にブースで聞いたときは「テレビとかあんまり知らないのだよなあ」と思いつつ、でもなんだかブースに立っている作者さんがにこにことってもいい雰囲気だった(しかもさっき私のブースに来てエッセイを買ってくれた方だ!と思った)のと、この方たちの往復書簡ってどんな雰囲気なんだろう、読んでみたいなあ、と興味を持ったので買いました。

そして自分でも意外なことに、文学フリマが終わって、当日購入したなかから一番最初に手にとったのもこの1冊でした。

装丁が優しげなパステル調のピンクでとっつきやすかったのかもしれないし、パラパラとめくったときに、気楽さが心地良いな、と思ったからかもしれません。

文学フリマの作品たちはみなそれぞれに熱量がほとばしっているので、私の場合、開くのに「えいや!」と気合いがいることもあるのですが、この作品はその佇まいや内容から、「寝転がって読んでもいーよー」と言ってくれるような気が(勝手に)して。

とても本気なんだけど、本気でゆるく遊んでいるというか、楽しんでいる空気感があるし、どこか読者のあり方も許してくれるというか、寛容的な雰囲気があるのはなぜなんだろう。

内容は説明のとおり、テレビやラジオのコンテンツを中心にした往復書簡なんですが、この、「普通の雑談を横から覗き見る」みたいな感覚が好きでした。私は直接その内容を知らないこともあるんだけど、同じクラスの中で横の席で誰かと誰かがしゃべってるのがたまに聞こえてくる、みたいな。そういう楽しさがあって。

ちなみに、ちくわのエピソードが個人的に好きでした。しばらくはスーパーでちくわを見かけるたびにこのZINEのことを思い出しそうです。

■ 本のおともにしたいアイテム:スーパーでおつとめ品になってるちくわ

 

『ななしな vol.1』(ナナシナタロウ)

シンガーソングライターとして活動するナナシナタロウさんのZINE。

私は文フリ福岡9閉会後にあった読書会で初めてお会いしたのですが、ミュージシャンをしながら自分で雑誌つくって文フリ出店、というのもおもしろいなと思ったし、なにより「語感好き」と言っていたところに興味を持って、作品も購入。

まえがきで触れられている時代への逆行感とか、複数コンテンツの間の話とか、あれもこれも自分でやりたくなってしまう感、個人的にとっても共感しながら読みました。

わかる…いや正確にいうと等しくわかるわけないんだけど、でもわかる…みたいな。文フリに出店するような作り手の方なら、きっとそういう人たち、多いのではないかなと思ったり。

小説+音楽という試みがあったり、ところどころに手描きのラフなイラストとつぶやきが添えられていたり、枠にとらわれずいろんなものを詰め込んでいるおもちゃ箱感、楽しいな。細かいところまで見ちゃう。

ちなみに個人的に一番好きだったのは、ベランダに落ちていたあれのエッセイでした。こういうときの逡巡、ありますよね……!

完全に余談ですが語感ラバー、きっと文フリ界隈には多いのではないでしょうか。みんなで改めてラーメンズの「名は体を表す」鑑賞会がしたい。

■ 本のおともにしたいアイテム:ドリップコーヒー(豆から挽いていれる工程もふくめて)

 

ぐらぐらぐらし(オオイシアオイ、鴨、佐久間素子、しろくま、ちゃげ、豆乳、吉田)

友人をはさんでその隣の長机のブースだったご縁がきっかけで、おしゃべりするうちに気になって購入した1冊。

全部で7名の方が著者となって制作されているZINEなのだけど、それならではの雑多感というか、「それぞれに異なるけれど同じくらい高い熱量のエネルギ―がどうしようもなく流れ込んでくる感じ」が独特で、妙にクセになる感じがありました。

年齢の話なんかどうでもいいわぁとわたしも思うほうの人間なのですがあえて書くと、今の自分と同世代とか近い考え方のZINEを読むとわりと“共感目線”に入っちゃうことが多い一方、『ぐらぐらぐらし』は自分とは少しだけ違う世代のリアルとかもやもやが渦巻いていて、“わかる”部分と"わからない"部分がどちらも共存していて、違ったおもしろさがあって。

わかりやすいものが世にあふれるなかで、「え、わからない!」みたいな気持ちよさがあるというか。

巻末にあったメンバーでの読書会(ZINE制作振り返り会)企画も、メンバー同士でわいわい雑談しているだけのように見えて実はものすごく内容を深掘りしていたり、忌憚のないこと言っていたり、双方の信頼感があるからこその熱量が満ち満ちていて。素直に、こういう関係性うらやましいなー!と思ったりしたのでした。

どのコンテンツも熱量があってよかったけれど、個人的には「ふにゃふにゃ労働日記」と「障害手帳を洗濯機にかけてしまったの巻」が特に好きでした。手帳のほうは見開き1ページだけなのにそこに詰まっているドラマが壮大すぎて。最高のドキュメンタリー。

■ 本のおともにしたいアイテム:小鉢いっぱいついてる定食

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さて、第一弾はこのへんで。

引き続き、昨年出会ったZINEの感想をできる範囲でまとめていきますー。全然、積み上がっている本たちを書ききれる気はしないけれど、志低く、ゆるやかに。

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