唐突に思い出したことがある。
オーストラリアの田舎を転々としながら、家事や農作業の手伝いをしつつ暮らしていたときのこと。
私はそのとき、ある牛飼いの家で、日々のこまごました家事を手伝っていた。
ある日そこへ、定期的に本格的な掃除を依頼されている、「ザ・家事手伝いのプロ」みたいなおばさまが来た。
掃除機は背負うタイプ。確かにテキパキと掃除をこなしていく。必殺掃除仕事人。
ちまちまと棚掃除をしていた私は途中まで、かなり残念がられていた。
"はぁ。これだからお手伝いちゃんは。掃除の邪魔ね”。そんな様子を感じとっていた。
でもそれが、逆転した瞬間を覚えている。
掃除のあと、彼女がその家の幼子におやつをあげようとして、「割れない食器か何かあればいいんだけど……」とつぶやきながら、うろうろしていたとき。
その場所に心当たりのあった私は、言われるまでもなく、子ども用の食器をとって、彼女にすっと差し出した。
そのとき、彼女は初めて私をちゃんと見た。
「ホストがあなたはgoodって言ってたけど、正直意味わかんないって思ってた。でもようやく今、その意味がわかったわ」
第一印象が薄くて、童顔の私。ことに外国では、ぽやんと何も考えていないおチビちゃん、と思われることも多い。
それでもくさらず、自分で考えることを忘れず、やってゆけば、伝わることもあるのだよなあと、思ったのだった。
やってゆこうか、くさらず。今日も。
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※この文章と写真は『At your own pace』管理人が運営するInstagram「もぐもぐエッセイ─食と暮らしと」のバックナンバーです。@mogu2bunにて、食べものや暮らしにまつわる400字or600字エッセイ等を投稿中。