もぐもぐエッセイ 暮らし

くさらずに。

2022年11月14日

唐突に思い出したことがある。

オーストラリアの田舎を転々としながら、家事や農作業の手伝いをしつつ暮らしていたときのこと。

私はそのとき、ある牛飼いの家で、日々のこまごました家事を手伝っていた。

ある日そこへ、定期的に本格的な掃除を依頼されている、「ザ・家事手伝いのプロ」みたいなおばさまが来た。

掃除機は背負うタイプ。確かにテキパキと掃除をこなしていく。必殺掃除仕事人。

ちまちまと棚掃除をしていた私は途中まで、かなり残念がられていた。

"はぁ。これだからお手伝いちゃんは。掃除の邪魔ね”。そんな様子を感じとっていた。

でもそれが、逆転した瞬間を覚えている。

掃除のあと、彼女がその家の幼子におやつをあげようとして、「割れない食器か何かあればいいんだけど……」とつぶやきながら、うろうろしていたとき。

その場所に心当たりのあった私は、言われるまでもなく、子ども用の食器をとって、彼女にすっと差し出した。

そのとき、彼女は初めて私をちゃんと見た。

「ホストがあなたはgoodって言ってたけど、正直意味わかんないって思ってた。でもようやく今、その意味がわかったわ」

第一印象が薄くて、童顔の私。ことに外国では、ぽやんと何も考えていないおチビちゃん、と思われることも多い。

それでもくさらず、自分で考えることを忘れず、やってゆけば、伝わることもあるのだよなあと、思ったのだった。

やってゆこうか、くさらず。今日も。

 

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※この文章と写真は『At your own pace』管理人が運営するInstagram「もぐもぐエッセイ─食と暮らしと」のバックナンバーです。@mogu2bunにて、食べものや暮らしにまつわる400字or600字エッセイ等を投稿中。

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