もぐもぐエッセイ 暮らし

風邪っぴきときしめん

2022年11月14日

「あ、きしめん、もう少しで賞味期限だから、そろそろ食べないと」

棚をのぞいた夫が言う。

夫が名古屋出張のお土産に買ってきたきしめん。ちょうど3人前だから子もいるときに食べたいねと言いながら、夕食はごはんが多いし、週末は出かけているしですっかり忘れていた。

「そっか。今週、どっかの夜は麺にしようかね」

そんな会話をした夜に、子が熱を出したりするのだ、世の中は。

翌日、保育園を休んだ子と食べる昼食は、迷うことなくきしめんとなった。

袋の指示に(できるかぎり)忠実に茹でたら、最初は細かった麺が次第に水分をふくみ、ぷりぷりと膨らんでゆく。

茹でる前、「ただのうどん」とか思ってごめん。

かぼちゃと玉ねぎ、鶏肉と、仕上げに溶き卵をたらり。

ぷりん、つるっと伸びのよいめんは、風邪っぴきの子の口にもずぞずぞと吸い込まれていった。

初めてのきしめんを食べた子に、どう?と問う。

「チーズみたい」

彼女にとって、最高の賛辞だ。

 

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※この文章と写真は『At your own pace』管理人が運営するInstagram「もぐもぐエッセイ─食と暮らしと」のバックナンバーです。@mogu2bunにて、食べものや暮らしにまつわる400字or600字エッセイ等を投稿中。

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