たんたんと絵本の記録を 絵本

絵本の読み語り記録:小学校 支援学級1-3年生(2024.10月)

小学校にて、朝15分の読み語り記録。

今回は、個人的に初めて支援学級の担当に。1〜3年の低学年クラスに入ったけれど、全部で10人弱の少人数で、椅子を持ってまわりに集まってくれるスタイルだったので、距離が近くてむしろいつもより和気あいあいと楽しく読めました。

さてさて、どんな反応があったでしょうか。

10月下旬

▼1冊目
『おいしいおと』

(三宮麻由子 文、ふくしまあきえ 絵/福音館書店)
目安:約3分

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少人数で距離が近いので、やりとりしながらの読みがたり。

「みんな、朝ごはん食べてきたかな〜?」と聞いたら、特に聞かずとも自分から「チキンバーガー!」とか「ごはんと唐揚げ!」とか、いろんなメニューを答えてくれていて元気いっぱい。

いろんなおいしいそうなもの食べてるね、と受けて、「今日は、おいしいおとを集めた1冊から。いろんな食べ物が出てくるので、食べるときのことを想像しながら聞いてみてね〜」と言ってスタート。

いわゆるありきたりの擬音語ではない、その食べ物を本当に食べているみたいな、一風変わった擬音がたくさん登場する、この1冊。たとえばほうれん草のおひたしなら「ズック ズック」とか、わかめを噛むときは「リョリュ リョリュ」とか。

作者の三宮麻由子さんは、幼いときに視力を失くされた全盲の方だという。研ぎ澄まされた音の表現がとても魅了的だ。そしてふくしまあきえさんの絵も、ほどよく写実的でありながら、手描きの絵の温もりが感じられる描写で、この文章にぴったり寄り添っているよう。

子どもたちのなかには、レタスの「シャン シャン」やりんごの「ショッ ショッ」に対して「シャキシャキやろ〜!」と突っ込んでいる子も。「シャキシャキ、かもしれないね。でも今度、食べてみるときに、ほんとうにそうかな? って考えてよーく聞いてみたら、違って聞こえるかもしれないよ〜」なんてやりとりもはさみつつ。

突っ込みながらも、みんなしっかり聞いてくれた。反応が元気で楽しい。


▼2冊目
『ぼくのくれよん』
(文・絵 長新太/講談社)
目安:約3分

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「2冊めは、絵を描く道具が出てくるよ。みんな、絵を描く道具って何がある?」と投げかけてみると、「鉛筆!」「絵の具!」に続いて「クレヨン」も出てきた。

「クレヨン使ったことある人〜?」と聞くと、ほぼ全員が手を挙げてくれたので、表紙を見せつつ、「そう、今日はみんなよく知っているクレヨンが出てくるお話。このクレヨン、一見普通のクレヨンだけど、実はちょっと変わったところがあるのです。何が変わっているのかというと……一緒に見てみようか」と言ってスタート。

個人的にも大好きな長さんワールド。シンプルなモチーフなんだけど、ページをめくるごとに「えー?!」という驚きがあって楽しい。「そんなわけないやろ〜!」とツッコミまくりの子もいたが、なんだかんだお話をしっかり聞いて反応してくれているのが嬉しい。

絵柄がダイナミックで、ぞうが大きなクレヨンで「びゅーびゅー」とスケールの大きなお絵描きをする様が、なんとも五感的に気持ちいいなと思う。

終わり方は、大人が読んでいると「あれ、ここで終わり?」という感じを持つ人も多いと思うのだが、子どもたちは違和感なく、余韻を楽しんでくれたみたいだった。子どもの想像力のほうがよっぽど豊かだよなあ、とあらためて。


▼3冊目
『みかんのひみつ』
(監修 鈴木伸一、写真 岩間史郎 ほか/ひさかたチャイルド)
目安:約5分

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「最後は果物を紹介する絵本です。ちょうどこれから、秋から冬にかけておいしい果物なんだけど、食べる真似をするから、何の果物か当ててみてね」と言って、手で丸をつくり、手で皮をむく真似をする。

……と、あちらこちらから「みかん」「ぜったいみかんでしょ!」と元気に答えてくれる。素直ないい子たち。「みんな大正解!」と言って、今日は『みかんのひみつ』を紹介します!と読み始めた。

ひさかたチャイルドのこのシリーズ、身近なものを徹底的に見つめて、「これって、そうなんだ!」という発見があって、大人でも読んでいておもしろい。みかんの皮を向いて、中の房に分けて、房の薄皮も向いて、さらにそれをばらばらにして……。

さらに、後半ではみかんが育つまでを定点観察の写真とともに紹介。10月後半の写真が薄黄色っぽい皮のみかんが写っていたので、「ちょうどいま、こういう色のみかんが売っているよね〜今年、食べた人いるかな?」と聞いたら、半分以上の子が手をあげていた。

さらに、自分も小学生くらいのときに流行った、「ヘタの裏側の筋を見ると、中にいくつの房が入っているかわかる」トリビアも入っているので、紹介したら先生も「へえ〜」って驚いてくれていて、嬉しかった。


「食べもの」と「文房具」という身近なモチーフに大いに救われて、みんなが参加しながら聞いてくれたのが嬉しかった。支援学級と聞いていたからどこか構えていたのは自分のほうで、子どもたちは柔らかくって、わが身も柔らかくしてもらった感じ。

そして先生も、しっかり一緒に聞いて参加してくれるのが本当にありがたい。「おいしいおと、探してみようね〜」とか「みかん、食べるの楽しみだね」と、そうやって一緒に声かけてくれることのどんなにありがたいことか。

総じて、初めての支援学級だったけれど、絵本の力と、子どもたちや先生のおかげでとても楽しく読ませてもらえた。またひとつ新しい体験をさせてもらったことに感謝して、次へのエネルギーにしてゆこう。

-たんたんと絵本の記録を, 絵本

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