「あ、きしめん、もう少しで賞味期限だから、そろそろ食べないと」
棚をのぞいた夫が言う。
夫が名古屋出張のお土産に買ってきたきしめん。ちょうど3人前だから子もいるときに食べたいねと言いながら、夕食はごはんが多いし、週末は出かけているしですっかり忘れていた。
「そっか。今週、どっかの夜は麺にしようかね」
そんな会話をした夜に、子が熱を出したりするのだ、世の中は。
翌日、保育園を休んだ子と食べる昼食は、迷うことなくきしめんとなった。
袋の指示に(できるかぎり)忠実に茹でたら、最初は細かった麺が次第に水分をふくみ、ぷりぷりと膨らんでゆく。
茹でる前、「ただのうどん」とか思ってごめん。
かぼちゃと玉ねぎ、鶏肉と、仕上げに溶き卵をたらり。
ぷりん、つるっと伸びのよいめんは、風邪っぴきの子の口にもずぞずぞと吸い込まれていった。
初めてのきしめんを食べた子に、どう?と問う。
「チーズみたい」
彼女にとって、最高の賛辞だ。
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※この文章と写真は『At your own pace』管理人が運営するInstagram「もぐもぐエッセイ─食と暮らしと」のバックナンバーです。@mogu2bunにて、食べものや暮らしにまつわる400字or600字エッセイ等を投稿中。