わが子は1歳3か月から保育園に通いはじめたのだけれど、その月の月刊絵本として、はじめて保育園から持ち帰ってきたのがこの『ぱんだちゃん』だった。
そんな背景があって、個人的に少し思い出深い1冊。
当時1歳の娘がこの絵本を持ち帰ってきて初めて家で読んで、思ったこと。
それは「あ、このくらいがいいんだ」ということだった。
当時わたしの手元には、言葉遊びやリズムを楽しむような絵本、またはストーリーがあって3歳くらいで一番楽しめるような絵本があって、実は1歳くらいで楽しめるお話の絵本、というのがほとんどなかったと思う。
というか、選び方もよくわからなかった。
お話といえば長いものだと思っていたし、逆に赤ちゃん向けといえば『いないいないばあ』や『じゃあじゃあびりびり』のような、ストーリーではなく切り取っても楽しめるようなものが主だと、なんとなく感じていたのだと思う。
そこにあらわれた救世主がこの、数々のロングセラーを持つ福音館書店さんの「こどものとも」シリーズである。
「あ、このくらいがいいんだ」。
0〜2歳くらいの子には、このくらいの色合いの絵だったり、文字量だったり、わかりやすさだったり、のお話を読んであげるといいんだな。
そんなことがストン、と実感してわかったような感覚だった。
お話としては、ぱんだちゃんが竹をむしゃむしゃ食べたり、木のぼりしたり、ウンチしたり、ごろんごろんしたり、という動きを追ったものである。
とくにストーリー、と呼べるものではもしかしたらないのかもしれない。でもこれは、わたしの中ではたしかに「お話だ!」と思った。
だってページごとにまったく違うキャラクターが出てくるわけではなくて、同じ一頭の「ぱんだちゃん」の行動を、追っているから。
ストーリーのある絵本を読み聞かせてあげたいなぁと思いつつ、まだなかなか理解できないし難しいなあ、と思っていたけれど。でも、そうか。お話といっても、こういう短さの、1歳でもわかりやすいものもあるのか!と気づかせてもらった。
さらには「むしゃむしゃ」とか「ごろんごろん」とか、1歳くらいの子といっしょに手遊びしやすい要素も散りばめられているのも、大きなポイント。
うんちのシーンがあるのも、こどもの興味にピンとくるな、と思う。
何より一番好きなのは、エンディング。
そしたら ごろんごろんしたくなっちゃって
ごろんごろんしてたらねむくなっちゃった
ママとおやすみ ぱんだちゃん
上の3行はそれぞれ1行ずつ、見開き1ページの絵と対になっている。
つまり、お話のテンポはとってもゆっくーりすすむ。
だから読み聞かせているときも、膝の上に載せた子といっしょに体を揺らしたりして、「ごろーんごろーん」としてみたりしてさ。
最後に、ぱんだちゃんが、ぱんだちゃんママと一緒に寄り添って寝ているシーンでは、そのまま子のからだをぎゅって抱き寄せたり、なでなでしたりする。
要素としては、言ってしまえばパンダと竹しか登場しない、とってもとってもシンプルな絵本。でもその分、ぱんだちゃんののびやかな動きに目がいって、愛くるしさが際立つ。
いま読むと、ぱんだちゃんの丸っこい動きと、赤ちゃんだったころの娘の動きがシンクロして、切なくも微笑ましいような気もちになったりもしつつ。
やっぱり最後の寄り添って眠るシーンは、ほっこりと幸せな気持ちになるのでした。
ところでこの『ぱんだちゃん』を皮切りに、娘が毎月保育園から持ち帰ってくる「こどものとも」シリーズが、わたしはとても楽しみだった(ちなみに娘が通っていた最初の保育園では、1歳児クラスでは『0.1.2』版を、2歳児クラスでは『年少版』を持って帰ってきていた)。
前も少し書いたけれど、年齢別に読みやすい、そして良質な絵本がコンスタントに読めるの、嬉しかったなぁ。こどものともシリーズで「今はこんな感じのお話がよさそうだな」という感覚をつかんで、わたしも図書館での本の選び方が変わったような気もしている。
まだまだ紹介したい「こどものとも」シリーズはたくさんあるので、ちょこちょこ時間を見つけて更新していきたい所存。
ちなみに、この『ぱんだちゃん』を描いたMAYA MAXXさんの絵本、他にどんなのあるかな〜と調べたら、こどものともシリーズの月刊誌から書籍化された『らっこちゃん』というのを見つけた。
絵本ナビさんでためし読みしたら、これも『ぱんだちゃん』同様、のびのびとしたらっこちゃんの姿が、ゆったりとした言葉とともに描かれていて。
他にもいろいろと動物が主役の絵本を描かれているみたいだし、MAYA MAXXさんは動物ののびやかな動きを表現するのがとても得意で、きっとご本人もとても好きなんだろうなぁ。と想像したのでした。
※『ぱんだちゃん』の表紙画像は、福音館書店さんHP内の「著作物の利用」記述にもとづき、利用可能な範囲で使用しています。