いま図書館で借りている本の中で、なぜか娘(4歳)が気に入っているのがこの1冊。
毎回大量に絵本を借りてきても、繰り返し自分で読みたくなる絵本と、そうでない絵本にわかれるのだけど、これは前者。読む前から自分でも気になっていたし、読み聞かせしたあとにも「かして」と言って、自分で改めて最初からページをめくっていた。
「この本好きだった?」と聞くと、「うん」とのこと。
決してにぎやかな感じの作品ではないのだけれど、もしかすると「らいおん」と「おじいさん」という組み合わせがつぼだったのかもしれない(最近なぜか「おじさん」の真似にはまっている娘……)。
たまにこういう、大人としてはちょっと意外なところでアンテナが止まるのが楽しい。
簡潔に紹介すると、ひとりぼっちのおじいさんと、ひとりぼっちのらいおんが心を通わせるおはなし。表紙からもわかるけど、全体的に色合いは控えめなトーンで、派手さはない。落ち着いた、静かなトーン。
でも最後まで読むと、なんともその静かななかで、心があったまる。そんな作品。
このらいおんとおじいさんにはある関係があって、わりとそれが重要なキーになっていると思うのだけど、それはぜひ実際に読んで知ってほしい。
個人的に一番印象的だったのは、ひとりぐらしのおじいさんがふらりと動物園を訪れて、同じくひとりぼっちで毎日を過ごすらいおんと、檻越しにはじめて対面するシーン。
なんと まあ
ずいぶん
かなしそうならいおんだ
ここのらいおんの表情が、たまらなく印象に残る。
涙を流すわけでもなく、心に孤独を抱えたというか、こんな人間みたいな表情のらいおん、はじめて見たかもしれない。
それでね。
その見開きページの右側では、らいおんが暗いながらも
「や…… やあ
こんにちは おきゃくさん」
といって、がんばって作り笑顔を作ろうとするのです。
かなしそうな表情をベースに、口の端だけを無理やりあげて、微笑もうとしているような感じで。だらんとしていたしっぽも、がんばって高くあげようとしてる、みたいな。
ぱっと見、ほぼ同じ表情なんだけど、よくよく見るとその表情の変化が、このらいおんのサービス精神とかこれまでの人生(らいおん生)とかを表しているような気が、全部読んだあとだとしてきてさ。
なんだか、ああ、と思って好きだった。
ちなみにこのページをまじまじと観察するきっかけになったのは、娘がこのページを開いて「まちがいさがし、しよー」って言ってきたからなんだけどさ。
でもそう言ってもらったことで、さっきの微細な変化みたいなものに目を向けるきっかけになったので、子の発想はおもしろいなと思う。
「似てるけど、なんか違う」っていうのを瞬時に見分けるんだろうな。(実際はおじいさんが描かれている、描かれていない、というところもあって言ったんだとは思うけれど)
出会ったふたりが、その後どうなるかも、読んでみてのお楽しみ。
でも読んだあとの気持ちは、しみじみとあったかい。それでもう1回最初から読みたくなる。
そんな感じの一冊です。