※本シリーズ(vol.1〜6)は2019年に書いた過去noteより転載するものです。当時とは感じ方など変わっているところもありますが、当時の記憶として、そのまま載せてゆきたいと思います。
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さあ、たんたんとゆきますよ。
今回は図書館が長期休みのタイミングだったので、その前に夫とわたしの図書カードを駆使して合計16冊借りてきた中から、特に気に入った4冊と、気に入ったわけではないけどちょっと心にとめておきたいと思った1冊を。
たくさん借りてきても、やっぱり何度も繰り返し読む本と、全然開かない本とか出てくるのがおもしろいなあ、と思う。
ではでは、さっそく……。
※『たんたんと、絵本の記録を』シリーズをはじめた気持ちの背景はvol.1にて。
最近のお気に入り絵本(娘2歳5ヵ月)/2019年6月
※ちなみに「お気に入り」とは、娘が気に入ったもの、わたしが気に入ったもの、2人とも気に入ったもの、どれでも可というゆるい運用です。
『きょうはそらにまるいつき』(荒井良二/偕成社)
前回に引き続き、荒井良二さんの一冊。母がファンだから、寝る前の絵本タイムを自分も楽しみたいし、とついつい何かしら借りてしまう(笑)。
今回は「夜」をテーマにしたお話だったから、いつもよりは暗めの色づかいのページが多くて、最初は「子どもにはどうかなあ……?」と思っていたけれど、そこはやはり、さすがの荒井さんワールド。
夜の世界でありながら豊かな色彩と、「バス」「赤ちゃん」「動物」など子どもが好きなモチーフが散りばめられていることもあってか、意外と子ども自ら何度も選んで、持ってきた。
母の一番のお気に入りポイントは、ページから次のページへの絵本の中での時間の流れが静かに、でもしっかりと、最後のページまで感じられるところ。
最初に登場したベビーカーに乗る赤ちゃんとお母さんが、その次、また次のページでも、よく見ると背景の中に小さく描かれていたりとか。
1台のバスがある女の子を乗せ、次では同じバスに男の子を乗せ、女の子はある駅でおり、その後は家でダンスの練習をして……というのが、とくに文章では語られずとも、ページをめくるごとに背景でも時間が着々と進んでいる。気づいたひとだけがこっそり楽しめる、第2の楽しみ方。こういうの、大好き。
『しっぽがぴん』(おくはらゆめ/風濤社)
これは図書館で見たとき、「あ、わかりやすいし、娘が気に入りそうだな?」と思って借りてきたら、ねらいどおり(?)娘が気に入ってくれた。
「しっぽが ぴん」と「しっぽが たらり」の2種類を繰り返し繰り返し、いろんな動物のしっぽで表現しながら、テンポよく読める。リズム感があって、小さい子が楽しみやすいと思う。1歳〜3歳くらいにおすすめしたい。
一度読んでからは、娘も自分で動物を指差しながら「ぴん!!」と言うようになった(たらり、は難しいみたい)。
動物がたくさん出てくるし、1冊の長さも短いので、子どもと遊びながら繰り返し繰り返し読みたい一冊。
寝転がって気軽に読める軽さと文量なのも、意外と大事な要素だよね。
『そよそよとかぜがふいている』
大御所、長新太さんのラインナップから。
実家にも長さんの別の絵本があって、その本を読み聞かせていたときにも思っていたけれど、長さんの絵本は語感がバシッ、としていて好き。
言葉あそびとか、短歌とか俳句とか、そういう日本語のリズムが好きなひとにはおすすめしたい。なんだろう、子ども向けの絵本だし子どもにもとても人気なんだけれど、大人にもかっこよくてクール、みたいな……。伝わるんだろうかこの感覚(笑)?
今回の本も、「〜でした。」という敬体じゃなくて「〜だ。」という常体メインだし、むしろなんというか、余計なことは言わない、あえて説明しない、みたいなところがあって、なんというか、やっぱりクール。
それでいて色づかいはこどもをも魅了するカラフルで独創的な、インパクトのあるもので。
しかもね。書こうかどうか迷ったけどやっぱ書いちゃうと、この本、いろんな動物の顔が、手の大きいネコによってみんな「おにぎり」にされちゃうというお話なの。
もうその発想なんなの大好きよ、だし、顔が三角なのに絶対これゾウだな、ライオンだな、ってわかる描きわけできるとかすごすぎるな、だし、タイトルにはおにぎりってひとことも言わず『そよそよとかぜがふいている』とか、クール以外のなにものでもない。
「おにぎり」も、長さんの手にかかればハイパークール。
『でんわでおはなし』
言わずと知れた五味太郎さんの絵本。今回はたまたま図書館の本棚で目に入った『でんわでおはなし』。
女の子が、誰かに電話しながら、今日あったことをふりかえる……という構成で、最初のページから最後のページまで、電話線がずうっとつながって描かれている。誰に電話しているかは、最後のページまでたどりついてのお楽しみ。
電話線を指でなぞりながら読みきかせていたら、途中から娘も自分で「つー」とか言いながら指で電話線の絵をなぞったりしていた。
女の子が電話で話しているという設定もあって、「〜なの」「〜のよ」なんてお話口調なのも、やわらかくて子どもには聞きやすいのかも。
個人的に好きなポイントは、文字がページの中に自由に配置されていること。電話線がカーブしたり、物の形を描いたりするなかで、文字も隅っこに整列することなく、ページの中に自由に浮遊している感じ。
五味さんの安定感抜群のなかで、遊び心とか自由度をとっても感じさせてくれて、うれしい一冊。
番外編:「看取り」を扱う絵本もあった
『さよならのじゅんび〜とみばあちゃんをみおくるまで〜』
これはわたしにとってはお気に入り、というわけではないのだけれど、「こんな絵本もあるのかあ」と思ったので記録しておきたい一冊。
そもそもは2歳の娘が絵に惹かれたのか、図書館で持ってきたので、それをそのまま借りた。タイトルからも想像できるとおりで、おばあちゃんを自宅で看取るというお話。
絵本チックにデフォルメというよりは、かなりリアルで、具体的な表記になっていると感じた。
ミキサーで細かくしたごはんを、お母さんと一緒に作って、寝たきりのおばあちゃんにスプーンで少しずつゆっくり食べさせたとか、ときに自宅のベッドで医師が点滴や酸素マスクをつけた治療をしているシーンとか。
「とみばあちゃん、さいきんあまり食べないんだ」と医師に相談したら、医師が「からだをつくるほねやさいぼうも年をとるからなんだよ」という話や、「じゅみょうがある」という話を、生物学的に少し解説してくれたりとか。
最後に保護者向けのページがあって、それを読むとこの絵本の監修は東京大学名誉教授 医学博士で「看取り医」であり、著書も多数の大井玄さんという方だったので、なるほどと頷いた。
文字が多い絵本なので、たぶん小学校低学年くらいを想定して描かれてように感じる絵本だけれど、不思議なことに、2歳の娘はこの絵本もよく持ってきた。「ばあば」の絵が描かれているから、それもあったのかもしれない。
あとは、わたしも夫も、この本を読んでいるときはどうしてもいろいろと考えてしまって自然と声のトーンが淡々とした感じになるので、他の絵本を読んでいるときのトーンとは違うその感じを、娘なりになんだか感じとっていたのかもしれないな、とも。
あくまで個人的な話をすれば、死生観を絵本で、という意味ではたとえばスーザン・バーレイの『忘れられないおくりもの』(↓)などが好きなので、今回の絵本は「この絵本、わたし好きだなあ!」という印象では正直なかったのだけれど、あくまでそれはわたし個人の好みの話。
それに、こういう「看取り」のような、現実的な題材を、こどもにとって身近なメディアで扱うのはたぶん必要で、きっと大事なことなんだろうなあ、という気持ちも同時に持った。もうちょっと、“説明的”じゃない雰囲気になると、さらにいいなあと思ったりはするけれど。
ただ、小学校低学年くらいの年齢で読むとなると、また全然違った体験になるんだろうなと思うし、近い環境にいるようなお子さんには、救いになったり、自分なりに理解するのにとても役立つ本なのかもしれないな、と思う。
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さて、最後はちょっとしんみりモードになってしまったけれど、今回はこのへんで。
ひとくちに絵本といっても、その表紙のなかにはほんとうにさまざまなストーリーが詰まっているな、と思わされる今日このごろです……。
さて、ぼちぼち図書館の長期休みもあけるころ。
次の週末には、また娘を連れて絵本探索に出かけたい。
今度はいったい、どんな出会いがあるかしら。
※以上、過去note(2019年7月1日)より転載
※『きょうはそらにまるいつき』『そよそよとかぜがふいている』については後日、ここで偏愛レビューも書いています。
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