
いきなり寒くなってきた11月。
小学校では運動会が終わり、ちょっとひとだんらく。
今回は支援学級で人数が少なく、かつ違う学年が混ざっている環境ということもあり、絵が大きく五感で味わいやすいものや、近い距離だからこそ楽しめるものなどを選びました。
11月中旬
▼1冊目
『がっこうに まにあわない』
(ザ・キャビンカンパニー/あかね書房)
目安:5分
まずは五感で味わいやすいものがいいな……と思い、いろいろ悩んだ結果、大好きなザ・キャビンカンパニーさんの大好きな1冊から。
見開きで描かれる、ユニークかつ美しい大きな絵柄がとても魅力的で、遠くから見るとその迫力がより伝わる絵本。
今回はひたすらツッコミ好きの男の子がいて、「いや、絶対夢オチでしょ」と何度も言いながら聞いていた。彼は彼で興味を持って見てくれているからこその発言なのでまったくわるいことではないのだけれど、複数人数で読み語りをしていると、お話の世界に入りたい子が、ほかの子の言葉で入りづらくなってしまうこともあって、複雑な気持ちも。
ふしぎな世界観や、感覚みたいなものが、どこまで届いたのかは、わからないけれど。
でもずっと静かに見ながら聞いてくれている子たちも多かったので、ザ・キャビンカンパニーさんの描く世界を見つめてもらいながらその空間を共有できたというだけでも、きっと心の片隅に何かしら残るものがあるんじゃないかなあ、と思ったりしている。
▼2冊目
『いもさいばん』
(文 きむらゆういち、絵 たじまゆきひこ/講談社)
目安:約7分30秒
「秋に美味しいもの、何がある〜?」と聞いてみると、「栗!」に続いて、「さつまいも!」という答えが。
「秋の季節にちなんで、こんな絵本を選んでみました。いもさいばん、ってどんな裁判だろうね。さてさて、芋をめぐって、どんな事件が起きるのでしょう〜」という感じでスタート。
こちらは『あらしのよるに』などで知られる知られるきむらゆういちさんが文章を、昔話系の絵本にぴったりの味わいある絵を描くたじまゆきひこさんが絵を描かれているもの。
前半は、さつまいも畑で毎晩芋を盗まれるおじいさんが、罠をしかけたり、落とし穴をほったりなんとかしてどろぼうをつかまえようとする様が描かれる。後半は、「どろぼう」と言われた動物たちが、いやいや、そもそも芋は人間のもの?土や太陽は誰がつくった?などなど言い出して、いもをめぐってあれやこれや……と、いもさいばん。
ちょっと哲学風味というか、考えさせられるような余白があるストーリーがやっぱり魅力。かつ、たじまゆきひこさんの絵が見開きでどどーんとのびのび描かれるし、時折縦向きのページもはさまれているので、ビジュアルとしても飽きない。
実際子どもたちも、集中してストーリーに入ってくれているようだった。結論が出ないまま終わるところも、よきだなあ。
▼3冊目
『このあいだに なにがあった?』
(佐藤雅彦+ユーフラテス/福音館)
目安:やりとりしながら約2分〜3分
少しだけ時間があまったので、「じゃあちょっとおまけの1冊で、リラックスして一緒に見てみよう〜」といってこちらを。
写真をよく見てほしい1冊なので、教室いっぱい、大人数の読み語りではちょっと持って行きづらいのだけれど、今日は少人数だったのでいいかもと思って選本していたもの。
タイトルの通り、2つの写真が出されて、その間を想像してみよう、というシンプルな構成の写真絵本なのだけれど、なかなかどうして、これが大人もおもしろいのです。
それもそのはず、著者はピタゴラスイッチなどを生み出した佐藤雅彦+ユーフラテスの方々。おもしろくないわけがなかろう。
お風呂のページが特に盛り上がっていた(私もこのページが一番好き)。
また、最後に日食が登場するので、1冊目の絵本とつながったのも、なんとなくまとまりが出てよかった。
日食についてちゃんと説明する時間がとれなかったのは残念だけれど、15分という限られた時間だし、全部が一度に伝えられないのはしかたない。
というわけで、今回はこちらの3冊でした。
この小学校の支援クラスは朝、自分のクラスに行ってから来るような形で集まり方がバラバラなので、1冊目を短めにして、2冊目にしっかり物語、という構成にしておいたのはよかった。
1冊目は人の出入りがあり子どもたちもキョロキョロしていたけれど、2冊目の物語は最初から最後までしっかり聞いてもらえている感触があったので。
単純に絵本を読む、というだけではない、そういう空間の状況なども、読みがたりの時間には大きく影響を与えるなあと感じる3年目。
そういう意味でも、先生方が一緒に絵本を聞いてくれているのは救いだった。ありがとうございました。