絵本

読んだら一緒に作って食べたくなる『おやまごはん(できるよできる・2)』(西内ミナミ・文、和歌山静子・絵/偕成社)【絵本紹介】

とある日の図書館で子がチョイスした1冊。

なんだけど、これが、シンプルな題材ながらとてもよかった。

特に子がとても気に入って、何度も繰り返し自分で持ってきて読んでいた……と思ったら、「おやまごはんつくって!」とにこにこ言い出すまでに。

奇抜なところはない、とてもわかりやすい絵本なのだけれど、自分の生活に直結しているごはんの話であることや、料理の工程の楽しげな雰囲気が伝わったのかな、と思う。

ちなみにおやまごはんというのは、端的にいうとチャーハンとかピラフみたいな具入りごはんを、山型に盛り付けたごはんのこと。そしてこの絵本は、そのおやまごはん完成までの料理工程をあらわしたものだ。

はじまりは、こんな感じ。

何やら赤やオレンジ、黄色のものがパラパラと舞うみじん切りの絵に、リズミカルなことばが並ぶ。

だいどころで
ほうちょうさんがうたってる。

たん たん たた たん
たた たた たん

あかいの、なあに?

でね。読み聞かせをしていると、ここで子どもが「にんじーん!」とか元気に答えてくれるわけです(かわいいのう)。

そこで、次のページをめくると、

あたった!
ニンジンさんよ。

って。

もちろんこの「あたった!」は、子どもの回答にあわせて臨機応変に「おしい!」とか「それもいいかも!」とか、変えたらいいと思うのだけど。

でも個人的にはなんだろう、わざわざ「あたった!」とか、後々は「おおあたり!」って書いてくれているの、なんだかいいなあ、と思ったのでした。

1回目は普通にクイズ形式で楽しめるし、2回、3回と読めばやっぱり子も答えを覚えて「あたる」わけで。そのなんていうんだろう、子と絵本の信頼関係みたいなものを想像している気がして好き。

絵本全体を通して、読み聞かせることを想定した語り口調になっていて、一文も短く絵と呼応しながら語感よくぱっぱっと進むので、そのあたりも子が気にいるポイントかもしれない。

ということで。

この絵本をいたくお気に召した娘が

おやまごはん、つくって

というので、ええ、もちろん作りました。

ひとつ言いたいことはですね、作る前に表紙の裏にあった「作者からひとこと」を読んでいてよかった!です。

作者からひとこと
“お山のごはん”とは──わが家の子どもが幼かったころ、チャーハン、ハム(チキン)ライスなどのことでした。ありあわせの材料で、味つけもさまざま。親子で歌いながら作ってたのしんだものです。

これを読んだとき、「あっ、それでいいんだ」と思うところがあって。

そうかこの「おやまごはん」は、作者さんもきっと忙しく過ごしていた子育ての日々の、実体験に基づいて生まれたものなんだと。

「おやまごはん」は呼び方としてはわたしにとっては初めてだったんだけれど、作者さんとお子さんの日々を想像したらいきなり、ぐっと身近なものになった感覚があったんですね。

だから娘に「おやまごはん、つくって!」と言われても

えっ、ピーマンとハム、今日ないよ!
っていうかそんな波型なんて持ってないわ!

などと絵本の「おやまごはん」を再現しようと気張りすぎることもなく、ありあわせの材料でちゃちゃっとチャーハン(みたいなもの)を作り、普通のお茶碗にぎゅうと詰めて、お皿にぽんと出すことができたのでした。

という経緯から改めて絵本を見ると、同じ内容の絵本でもタイトルが「チャーハン」でも「ピラフ」でもなくて「おやまごはん」であることに、とてつもない寛容さというか懐の深さを感じたのでありました。

チャーハンでもチキンライスでも、なんなら炊き込みご飯だって、具材が入ってるごはんを「おやま」にしたら「おやまごはん」ですもの。ありがたい。

きっと絵本を読んで「おやまごはん、つくって!」とリクエストされることが多いだろう親御さんの存在を見越して、きっとこの「作者からひとこと」があるんじゃないかしら、なんて。

西内ミナミさんの子に語りかけるような文体はもちろん、和歌山静子さんのなんともいえないクレヨンタッチの絵も、ほっこりして好きです。

たとえば料理に興味を示している時期に読んであげると、とてもよいかも。

あとはもしかすると、お野菜嫌いな子が「おやまごはん」なら食べてくれるようになるかも、ならないかも……?! お試しあれ〜。

おやまごはん (できるよできる) [ 西内ミナミ ]

-絵本

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